いつかは必ず発生してしまう「相続」。家族の死という悲しみの後に、せめてその手続きだけでも円満に進めたいもの。そのためには、みんなが元気なうちから用意しておくことが重要です。今回は弁護士の本田桂子先生に「公正証書遺言書の作り方」について解説してもらいました。
前の記事:知っておきたい「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」のメリット&デメリット/やさしい相続入門(3)はこちら
公証人に任せるので自分で書かなくてもよい
前回は「公正証書遺言」について触れましたが、ここでは「公正証書遺言」の具体的な作成について見ていきます。「公正証書遺言は、内容を決めたら必要書類を渡すだけで、あとは公証人が作成してくれます」と本田先生。本人が行けない場合は、公証人に自宅や病院、介護施設などに来てもらうこともできます。
では、具体的な作り方の流れを見ていきましょう。
●公正証書遺言はこのように作ります
遺言書の内容を考える
・財産の種類、金額を書き出す。
・誰にどの財産を相続させるか分け方を考える。
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公証役場で打ち合わせる
・遺言の内容を伝えて作成日を予約する。
・どんな書類が必要かを確認する。
↓
必要書類を集める
・印鑑登録証明書、戸籍謄本、不動産登記簿謄本などを用意する。
・その他の財産関係資料(預金通帳など)を集める。
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証人を依頼する
・証人になってもらう人を決める(2人)。
・証人には、身分証明書、印鑑を用意してもらう。
↓
公正証書遺言を完成させる
・証人と一緒に公証役場に行き、公証人に遺言書を作成してもらう。
・原本は公証役場で保管し、正本・謄本が本人に交付される。
「公正証書遺言」は上の図の手順で作成し、公証人のほかに「証人」が立ち会います。「証人」は信頼できる親戚や友人などに依頼しますが、頼める人がいない場合は、公証役場から有料で紹介してもらえます。
「公正証書遺言」の作成費用は下のようになります。作成者の財産額、相続人数などによって異なります。
●公正証書遺言の作成費用は相続人数分必要です
※以下、財産の価値(左)に応じた手数料(右)を表します
・100万円以下・・・5,000円
・100万円を超え200万円以下・・・7,000円
・200万円を超え500万円以下・・・11,000円
・500万円を超え1,000万円以下...17,000円
・1,000万円を超え3,000万円以下...23,000円
・3,000万円を超え5,000万円以下...29,000円
・5,000万円を超え1億円以下...43,000円
・1億円を超え3億円以下...43,000円に超過額5,000万円ごとに13,000円を加算した額
※出典:日本公証人連合会のホームページを基に作成
たとえば、4,000万円の財産を2人で2,000万円ずつ相続するときは、以下のようになります。
相続を受ける人ごとの財産の価額を上の「作成費用」のリストに当てはめて手数料を算出し、それらを合算します。
全体の財産が1億円以下の場合は、合算した手数料額にさらに11,000円を加算します。別途、遺言書の原本、正本、謄本の交付手数料が必要です(約3,000円)。
●「公正証書遺言」を残す人は年々増加傾向に
出典:日本公証人連合会の統計を基に作成
「『公正証書遺言』を作成しておけば、亡くなった後の相続手続きがスムーズに運びますし、なによりも残された遺族の心身の負担を減らすことができます」と本田先生。
これらを参考に、必要に応じて公証役場を利用しての遺言書作成を検討してみてください。
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取材・文/松澤ゆかり イラスト/いなばゆみ