「騙したわね」と怒りのオーラを放つ義母に、私の口からとっさに出た言い訳は.../別居嫁介護日誌

「妊娠・出産・育児」をすっとばして、いきなり「介護」が始まった! 離れて暮らす高齢の義両親をサポートしている島影真奈美さん。40代にさしかかり、出産するならタイムリミット目前――と思っていた矢先、義父母の認知症が立て続けに発覚します。戸惑いながらも試行錯誤を重ね、いまの生活の中に無理なく介護を組み込むことに成功。笑いと涙の介護エピソードをnoteマガジン『別居嫁介護日誌』からご紹介します。なんとなく親の老いを感じ始めた人は必読!


こんにちは、島影真奈美です。義母に「アルツハイマー型認知症」の診断が下った前回。医師からは、できれば義父も受診したほうがいいと勧められました。びっくり仰天していたのは私だけで、義父も夫もとくに驚いている様子はなかったようにも見えましたが......。夫に真意をたずねたところ、予想外の答えが返ってきました。

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いつかは介護が必要になる日が来るかもしれないとは思っていたが、義父母が同時に、認知症の診断が下るということは想像していなかった。

義母に「中程度のアルツハイマー型認知症」という診断が下ったのはまだしも、義父にも認知症の疑いが浮上したことに、私はショックを受けていた。

ただ、表向きは努めて「ごくふつうのこと」として振る舞おうとした。私が慌てふためくことで義父が警戒し、受診拒否されてしまっては元も子もないと思ったからだ。

「おとうさん、先生がこう言ってくださってるので、受診の予約をとってもいいですか」

私の心配は杞憂に終わった。義父は動じることなく、「そうしてください」と即答した。そして、医師に向かって、最近もの忘れがひどくなったように感じていたこと、必要があればきちんと治療したいといったことを時々言葉に詰まりながらも、しっかりと意志表示した。

 

診察室を出て、会計を待つ間に、夫とも話をした。

「まったく驚かなかったわけではないけど、"もしかしたら......"とは思ってたから。久しぶりに会ったら親父の顔、なんか表情がなくて能面みたいになってたでしょ。だから、心配だったんだよね」

そうなの? 何も言ってなかったじゃん。思わず、私が咎めるように問いただすと、夫はとくに気にする様子もなく、「まあ、気のせいかもしれなかったから」と言った。

いろいろわかったようなつもりでいたけれど、全然気づいてなかった。義父の変化にも、夫がそんな風に危機感を抱いていることにも。だいたい、自分の親なのに危機感ゼロで、何も見ていないし、感じてもいない。そんな風に決めつけてごめん。目が節穴だったのは私のほうだった。

スライディング土下座の気持ちで会計を済ませ、一件落着......というわけにはいかなかった。そう! 義母の不機嫌問題が残っている。

不意打ちの問診にテスト、さらには待合室で延々待たされ、義母は不機嫌を通り越し、全身から怒りのオーラが立ち上っている。少しでも場を和ませようと、ニコニコと愛想笑いしながら「帰りましょうか」と声をかけると、義母は私をにらみつけ、言い放った。

「あなたたち、謀ったわね......」

初めて聞く、ドスの利いた声だった。バレた! マズい。どうしよう! 夫も義父も、困惑した顔をしている。ダメだ。誰も助けてくれない。とっさに口から出たのが、これだった。

UP第14話島影様介護日誌.jpg

 

「何言ってるんですか。おかあさん。Tさん(義母の息子で、私の夫)のもの忘れがひどいから相談に来たんですよ!」

テキトーにも程がある。ところが、この苦し紛れの言い訳がなぜか、義母のツボにハマった。

「あら! あの子ったらもの忘れがあるの? もうそんな歳だったかしら。ウフフ。もの忘れって、ホント厄介よね」

まさかのご機嫌回復であった。さっきまで険しい顔で口をとがらせ文句を言っていたのがウソのように朗らか。声も弾んでいる。もの忘れ外来でのやりとりはきれいさっぱり忘れてしまったのか、「あなたも大変ね。でも、気を落とさないで」なんて明るく励ましてくれる。やたらと嬉しそうですらある。いやいや、その通りではあるけれど。なんだ、この展開。

 
●今回のまとめ
・ "あわてないフリ"は日々のトレーニングのたまもの。さまざまな場面の対処法をイメージしておこう
・疑い深くなっている親への対応は腹をくくって、にこやかに
・多少つじつまが合わなくとも、笑顔で乗り切ろう

 

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イラスト/にのみやなつこ

 

 

島影真奈美(しまかげ・まなみ)

フリーのライター・編集として働くかたわら、一念発起し、大学院に進学した数ヵ月後、夫の両親の認知症が同時発覚。なりゆきで介護の采配をふるうことに。義理の関係だからうまくいくこと、モヤモヤすること、次から次へと事件が勃発。どこまで理解しているのか謎ですが「ぜひ書いて!」という義父母、義姉、夫の熱烈応援(!?)に背中を押され、この体験記を書き始めました。朝日新聞「なかまぁる」にて「もめない介護」を連載中。

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