ハードルの高い「薬の服用」はお薬カレンダーで解決! と思ったら一筋縄ではいかず.../別居嫁介護日誌

「妊娠・出産・育児」をすっとばして、いきなり「介護」が始まった! 離れて暮らす高齢の義両親をサポートしている島影真奈美さん。40代にさしかかり、出産するならタイムリミット目前――と思っていた矢先、義父母の認知症が立て続けに発覚します。戸惑いながらも試行錯誤を重ね、いまの生活の中に無理なく介護を組み込むことに成功。笑いと涙の介護エピソードをnoteマガジン『別居嫁介護日誌』からご紹介します。なんとなく親の老いを感じ始めた人は必読!


こんにちは、島影真奈美です。だまし討ちそのものだった「もの忘れ外来受診」に、義母が怒り心頭だった前回。でも、「夫(義母にとっては息子)の受診だった」という苦し紛れの言い訳に、あっさり乗ってくれてご機嫌復活。え、そんなテキトーでいいの? と、こちらは戸惑うことに。そして、認知症の治療が始まりました。

pixta_34289556_S.jpg前の記事「「騙された」と怒りのオーラを放つ義母に、私の口からとっさに出た言い訳は.../別居嫁介護日誌(14)」はこちら。

 
義母の投薬治療が始まった。処方されたのは「メマリー」という抗認知症薬。アルツハイマー型認知症の進行を抑え、気持ちを穏やかにする作用があるという。厄介だったのは、その服用方法だ。

最初の7日間は5mgの錠剤を1日1回服用する。次の1週間は10mgの錠剤を1日1回服用する。そして、2週間後に再受診。もし、薬を増やす過程で気持ち悪くなったり、めまいを起こしたり......といった何かトラブルが起きたら、クリニックにすぐ連絡する。

......って、かなりハードル高くないですか。

医師が説明している間、義母はうわの空。義父も「難しくて、よくわからない......」と、顔をしかめていた。医師はごく当たり前のように「ご家族に手助けしてもらってください」と言うけれど、普段は老夫婦のみのふたり暮らし。「今日の薬はこれですよ」と手渡せる同居の家族はいない。

「認知症は薬を飲めば治るというものではない」
「これまでの生活をできる限り続けていくにはケアが重要」
「子どもさんたちにしっかりサポートしてもらってください」

こうした話をしつこいぐらいに繰り返された後で「一緒に暮らしてないので、毎日の薬の服用支援は難しいっすねー!」と切り出すのは、ずいぶんと勇気がいる。

だが、いざ伝えてみると医師の反応はごくあっさりしたものだった。

「では、薬局に相談してみてください。飲み間違いや飲み忘れを防ぐ『お薬カレンダー』というものがあって、現物も見せてもらえると思うので」

クリニックに隣接する薬局で見せてもらった「お薬カレンダー」は、実に便利なアイテムだった。ビニール製のポケットがついた壁掛けカレンダーに、曜日と服用タイミング(「朝・昼・夕・寝る前」など)が記載されている。飲むべきタイミングごとに、各ポケットに薬をセットしておけば、「いつ、どの薬を飲めばいいのか」が、ひと目で分かる。

お薬カレンダーには「1週間用」と「2週間用」があるという。ただ、薬局に在庫があったのは1週間用だけ。翌週にはまた夫の実家に行き、薬をセットしなくてはいけないのかと思うと気が重かったが、背に腹は代えられない。とにもかくにも、すみやかに義母に薬を飲んでもらえるような環境を整えるべく、1週間用のお薬カレンダーを購入した。

薬剤師から「薬の一包化(いっぽうか)」も勧められた。これは朝食後に飲む薬、昼食後に飲む薬などを服用時間ごとに一袋にまとめるやり方だ。お薬カレンダーにセットするにあたっては、錠剤やカプセルのシートをハサミで切り離す手もあるが紛失しやすく、誤ってシートごと飲み込んでしまうリスクもある。安全性を確保するという意味でも、一包化しておいた方がいいという。

あとは、良きところにお薬カレンダーを設置し、1週間分の薬をセットするだけ。さっさと任務を終えて引き上げたいのは山々だが、話はそう簡単ではない。ババーンと立ちふさがって行く手を阻むのはもちろん、義母である。

UP第15話島影様介護日誌.jpg 

「そんなものなくても、薬ぐらいきちんと飲めるのに......」
「どうしても、それ(お薬カレンダー)を使わなきゃダメなの」
「壁になんて貼ってもすぐ落ちてくるんじゃない?」

もともとお嬢様育ちで、どちらかといえば上品な奥様カルチャー界の住人である義母は、面と向かってブーブー文句を言ったりはしない。ごく遠回しに、やんわりと不満をおっしゃる。でも、こちらとしても易々と引き下がるわけにもいかない。

「そうですね! このドアのあたりはどうですか?」
「将来を考えると、今から慣れておくといいんですって」
「先生も便利だとおすすめのアイテムだそうですよ。あ、ここはとっても見やすそうですよ」

義母の不満げに1ミリも気づかない、「明るくて朗らかだけど、少々ニブい嫁」を全力で演じた。わっしょいわっしょい盛り上げ、無事にお薬カレンダーを設置完了。幸いなことに「どうしてこんな薬を飲まなくちゃいけないのよ!」という文句は出なかった。のちのち、別の理由でウンザリすることになるのだが、このときばかりは義父母の"病院好き"に助けられた。

●今回のまとめ
・認知症の人とその家族にとって、服薬ルールの複雑さも戸惑いの原因になる
・ただし「家族が付き添って飲ませなくちゃ無理!?」とあわてるのは早計。対応策は実はたくさんある
・「明るくて朗らかだけど、少々ニブい」キャラ設定は汎用性高め

 

次の記事「次々に解決策を提案してくれるなんて! ありがたや~地域包括支援センター/別居嫁介護日誌(16)」はこちら。

その他の「別居嫁介護日誌」はこちら

イラスト/にのみやなつこ

 

 

 

島影真奈美(しまかげ・まなみ)

フリーのライター・編集として働くかたわら、一念発起し、大学院に進学した数ヵ月後、夫の両親の認知症が同時発覚。なりゆきで介護の采配をふるうことに。義理の関係だからうまくいくこと、モヤモヤすること、次から次へと事件が勃発。どこまで理解しているのか謎ですが「ぜひ書いて!」という義父母、義姉、夫の熱烈応援(!?)に背中を押され、この体験記を書き始めました。朝日新聞「なかまぁる」にて「もめない介護」を連載中。

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