行き先はもの忘れ外来なのに「お食事に行くの?」と質問攻めの義母。もう助けて~/別居嫁介護日誌

「妊娠・出産・育児」をすっとばして、いきなり「介護」が始まった! 離れて暮らす高齢の義両親をサポートしている島影真奈美さん。40代にさしかかり、出産するならタイムリミット目前――と思っていた矢先、義父母の認知症が立て続けに発覚します。戸惑いながらも試行錯誤を重ね、いまの生活の中に無理なく介護を組み込むことに成功。笑いと涙の介護エピソードをnoteマガジン『別居嫁介護日誌』からご紹介します。なんとなく親の老いを感じ始めた人は必読!


こんにちは、島影真奈美です。夫と義父、わたしの3人で「もの忘れ外来」を家族受診しようと約束した前回。ところが! 受診当日、待てど暮らせど、義父は待ち合わせの場所に現れません。いったい、どうなっちゃってるの!? ――夫の実家に電話をかけてみると、思いもよらない展開が待っていました。

pixta_39869249_S.jpg前の記事「「どこ行ってたの!」在宅の義父を駅まで探しに行く義母。それって世間で言う「徘徊」では⁉/別居嫁介護日誌(11)」はこちら。

 
家族だけでの受診もOKの「もの忘れ外来」の予約がとれたのは、5月末のこと。義姉と一緒に地域包括支援センターを訪れてから、2週間しか経っていなかった。でも、当時の私にとっては、1ヶ月も2ヶ月も待ちわびていたような気分で「その日」を迎えた。

とにかく医師に相談をして、次の突破口を見つける。話はそれからだ、と思っていた。しかも、義父も一緒に受診してくれるとなれば心強い。いろいろなことがうまく回り始めたと思っていた。

しかし、義父は待ち合わせ場所に現れなかった。

約束の時間をすぎても一向に現れる気配がない。駅に向かう途中で倒れていたら......と、嫌な想像ばかりが頭をよぎる。

焦りながら、車で待っていた夫に電話をすると「とりあえず、実家に電話してみなよ」と、のほほんと言われた。それもそうか、と気を取り直し、夫の実家に電話をかけてみると、「はい......」と聞き覚えのある声が聞こえてきた。おとうさん!!

「えっと......今、駅の改札にいるんですけど......」
「はい......」
「今日ってあの例の病院の......」
「はい......」
「もしかして今、おかあさんも一緒ですか?」
「はい.........」

はぁああぁあぁ? であった。思わず、携帯を握る手に力もこもるし、何なら汗ばんでもいた。全然、話が違うじゃないですか。おとうさん!!!
とはいえ、いまさら引き下がるわけにもいかない。これから再度予約を取り直すとなったら、また2週間、いや1ヶ月近く待つことになるかもしれないのである。

もう、どうにでもなれという気持ちで
「そうですか。じゃあ、ご自宅に迎えにいきましょうか」
と尋ねると、義父の答えは「はい......」。

聞いておいてなんですけど、本当にいいんですか。行きますよ、行っちゃいますよ!!  一体、何が起きているのか、さっぱりわからない。義父はどういうつもりなのか。

「え、なんで親父とおふくろ、一緒にいるの? おふくろ今日はいないんじゃなかったの?」
「知らないよ!!」
戸惑う夫を急かし、夫の実家に向かった。

「あらぁ、今日はみなさんおそろいで、どちらにお出かけ?」
実家の玄関チャイムを鳴らした途端、上機嫌の義母が現れた。いつも以上におしゃれをして、メイクもバッチリだ。後ろから義父が「いいから早く、車に乗りなさい。みんな忙しいんだから」と声をかけている。

えーっと、これはもしや、義母には単なる外出だと偽って、受診に持ち込もうという作戦でしょうか。なんとなく状況は察したものの、義父の真意はつかめない。

夫に「クリニックに、事情が変わったことを連絡しておいたほうがいいんじゃない?」と耳打ちされ、慌てて車を降り、少し離れた場所から電話をかける。ああ、もう面倒くさい! 段取りを変更するなら、事前に連絡をくれればいいのに......と恨めしいような気持ちにもなっていた。

さらに困ったのが、義母による質問攻めだ。
「ねえ、今日はどこに行くの?」
「どこかにお食事に行くのかしら?」
「お仕事、お休みなの?」

後部座席からバンバン質問が飛んでくる。そりゃ、そうかとも思う。疎遠な息子夫婦が突然、レンタカーで現れ、外出しようというのだから、疑問に思って当然なのだ。

気の利いた答えのひとつでも返したいところだが、何も思いつかない。どうか、質問は私ではなく、ご主人や息子さんにお願いします.........と祈るばかり。

UP第12話島影様介護日誌.jpg

 

沈黙する車内で、義母だけが話し続ける状況に耐えられなくなり、バックミラーに映る義父に「なんとかして......!!」と念を送るも、無反応。運転席の夫はひたすら前方を見つめ、ハンドルを握っている。似たもの親子か!

今なら私も、義母の質問に真面目に答える必要はなかったことを知っている。「おかあさん、そういえばチョコレートケーキとアップルパイ、どっちが好きですか?」とか、「今日は天気がいいですね。ほら、空があんなに青い」とか、適当に話を変えちゃえばいいのだ。

関心がある話題なら、おしゃべり好きの義母はすぐ乗ってくる。どうにも答えに詰まったら、義父や夫のように聞こえないフリをしても問題ない。そのうち、空気を読んで諦めてくれたりもする。

でも、当時はまだそんなことをまるで知らなかった。目上の人の質問を無視し続けるという失礼さ加減への自己嫌悪と、適当な言い訳が思い浮かばない困惑、「どうして私がこんな目に......」といった腹立たしさが、腹の中でぶつかりあい、もの忘れ外来クリニックに到着する前から疲労困憊していた。

 

●今回のまとめ
・いやがる可能性がある場合、本人には「もの忘れ外来を受診する理由」を伏せるのも一案
・ただし、「健康診断」や「単なる外出」など口実をでっちあげた場合は、受診先とも情報共有が◎
・もの忘れ外来側も慣れているので、話を合わせてくれる

 

次の記事「義母の認知症確定、そして義父も! ついに私の自由な日々が終わるってこと⁉/別居嫁介護日誌(13)」はこちら。

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イラスト/にのみやなつこ

 

島影真奈美(しまかげ・まなみ)

フリーのライター・編集として働くかたわら、一念発起し、大学院に進学した数ヵ月後、夫の両親の認知症が同時発覚。なりゆきで介護の采配をふるうことに。義理の関係だからうまくいくこと、モヤモヤすること、次から次へと事件が勃発。どこまで理解しているのか謎ですが「ぜひ書いて!」という義父母、義姉、夫の熱烈応援(!?)に背中を押され、この体験記を書き始めました。朝日新聞「なかまぁる」にて「もめない介護」を連載中。

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