「どこ行ってたの~」在宅の義父を駅まで探しに行く義母。それって世間で言う「徘徊」では⁉/別居嫁介護日誌

「妊娠・出産・育児」をすっとばして、いきなり「介護」が始まった! 離れて暮らす高齢の義両親をサポートしている島影真奈美さん。40代にさしかかり、出産するならタイムリミット目前――と思っていた矢先、義父母の認知症が立て続けに発覚します。戸惑いながらも試行錯誤を重ね、いまの生活の中に無理なく介護を組み込むことに成功。笑いと涙の介護エピソードをnoteマガジン『別居嫁介護日誌』からご紹介します。なんとなく親の老いを感じ始めた人は必読!


こんにちは、島影真奈美です。義父母が自分たちでもの忘れ外来を受診していたことがわかった前回。「認知症ではなく、年相応のもの忘れ」と診断され、ご満悦なふたりに、どうやって再受診を持ちかけるのか......。頭を抱えながらも、なんとか手はずを整えた頃、義父から「妻の様子がおかしい」と相談されました。

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義父は物静かな人で、口数も少ない。何か質問すれば、丁寧に答えてくれるが、無駄話はしない。用件が終わると、「家内も話したいだろうから」とすぐ義母に電話を代わってしまう。とりとめもないおしゃべりはもっぱら、義母担当だった。

だが、その日は様子が違った。ひと通り話し終えても、「家内に代わります」の定番フレーズが出てこない。義母はどこかに出かけているのだろうか。少しの沈黙があった後、義父が堰を切ったようにしゃべり始めた。

「最近、妻の様子がおかしいんです......。夜になると『おとうさまが帰ってこない』と言い出す。僕はね、家の中にいるんですよ。それなのに『いなくなった』と言って、家中を探しまわったりしている。そのうち、スーッと外に出て行くこともある」

おとうさん、こんなにしゃべる人だったんだ! というのがまず、最初の驚きだった。あっけにとられている私に、義父が畳みかけるように、義母の奇妙な行動を訴える。

「つい先日も、気づくと姿が見えなくなっていたんです。1時間ぐらい経って帰ってきたと思ったら、『あなた、どこに行ってたの?』と言うんですな。彼女曰く、『あんまり帰りが遅いから駅まで迎えに行ったのよ』と。無事だったのはよかったんですが、どうも話がよくわからない。頻繁にこういうことがあると、こちらも神経がやられてしまいそうで......」

おとうさん、それって世間で言うところの「徘徊」では......? でも、何をどう伝えればいいものやら。私が黙っている間も、義父は「おかしいと思うでしょ? おかしいんですよ」と繰り返している。こうなったら、イチかバチか勝負するしかないか。よし、言ってしまえ。

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「お義父さん、おっしゃるようにおかあさんは、ちょっと心配な状態だと思います。ものは相談なんですけど、まずは家族だけで専門のドクターのところに行って相談しませんか。以前から私たちも少し心配に思っていて、実は予約をとってありました。まずは私たちだけで行って、その後ご相談するつもりだったんですが、おとうさんも一緒に行きませんか」

義父は黙って聞いていた。時折、「ほう」とため息のようなあいづちが電話の向こうから聞こえる。どう受け止めているのか、表情が見えないのでまるでわからない。祈るような気持ちで、もう一度聞いた。

「おとうさん、一緒に受診して、これからのことを相談しませんか」

義父の答えは「ぜひそうしたいと思います」だった。全身の力が抜ける思いだった。小さくガッツポーズ。よし、これで前に進める。念のため、義母が近くにいないことを確認した上で、受診の際の待ち合わせ場所など詳細を義父と相談した。

「おとうさん、待ち合わせはご自宅の最寄り駅でどうですか?」
「わかりました。家内には黙っておけばいいですね」
「そうです。ただし、ウソは最小限にしましょう。万が一、おかあさんにバレそうになったら、私と会うことは伝えていただいて大丈夫なので『仕事の相談に乗ってほしいと言われている』と説明してください」
「わかりました。そうしましょう」

おせっかいにもほどがあるが、「万が一にも義父が浮気を疑われてはならない」という思いがあり、「はじめての浮気教室」のようなやりとりになった。義父によると受診当日、義母には外出の予定があるという。「義母に内緒で、義父と受診」を実行するには好都合だった。

夫に報告すると「すごいな。よくあの親父を口説きおとせたね!」と、しきりに感心され、私は得意満面だった。義父との協力体制が組めそうな手ごたえも感じ、「大きな一歩を踏み出せた気がする」と浮かれに浮かれていた。

ところが受診当日、約束の時間が過ぎても、義父は現れなかった。

 

●今回のまとめ
・親が不安を口にしたときは「受診」をうながすチャンス
・ただし、あせりは禁物。まずは相手の不安にじっくり耳を傾けて
・自分が「聞きたいこと」より、親が「話したいこと」を優先しよう
・質問は内容を絞って、おだやかな口調を心がけること

 

次の記事「行き先はもの忘れ外来なのに「お食事に行くの?」と質問攻めの義母。もう助けて~/別居嫁介護日誌(12)」はこちら。

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イラスト/にのみやなつこ

 

 

島影真奈美(しまかげ・まなみ)

フリーのライター・編集として働くかたわら、一念発起し、大学院に進学した数ヵ月後、夫の両親の認知症が同時発覚。なりゆきで介護の采配をふるうことに。義理の関係だからうまくいくこと、モヤモヤすること、次から次へと事件が勃発。どこまで理解しているのか謎ですが「ぜひ書いて!」という義父母、義姉、夫の熱烈応援(!?)に背中を押され、この体験記を書き始めました。朝日新聞「なかまぁる」にて「もめない介護」を連載中。

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