介護される人、介護する人がおさえておきたい「高額介護サービス費」と「介護休業給付」/介護保険

"人生百年時代"を迎えました。誰もが健康で長生きすることを望んでいると思います。しかし、もし自分、あるいは大切な家族が「介護」が必要になったらと思うと不安になってしまいます。そこで、誰もが知っておきたい「介護保険」について介護に詳しい専門家の高室成幸さんにお聞きしました。

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介護保険を利用する際に、おさえておきたい制度が幾つかあります。高額介護サービス費や成年後見制度など、介護する人や介護される人にとって、知っておくことでとても役立つ制度ばかりです。これら制度について、詳しく解説します。

 

高額介護サービス費は介護サービス利用者の負担を減らす

高額介護サービス費とは、介護保険を利用して支払った自己負担額1割(一定の所得がある人は所得に応じて2割または3割になる)の合計が、同じ月に一定金額を超えたとき、申請することで超えた分のお金が戻ってくる制度です。

健康保険には高額療養費制度があり、病院で支払った金額が一定額を超えた場合に超えた金額が戻ってきますが、それの介護サービス利用者版です。

国の制度に基づき各市区町村が実施するもので、個人の所得や世帯の所得によって上限が異なり、所得などの諸条件によって区分分けされています。区分は合計所得金額をもとに決められますが、この合計所得金額とは、収入額から扶養控除や社会保険料控除などの所得控除額を引いた金額を指しています。

例えば、単身高齢者で、老齢福祉年金を受給している人、または前年の合計所得金額と公的年金等収入額の合計が年間80万円以下の人、あるいは生活保護を受給している人の自己負担上限額は1万5,000円です。

もし、自己負担上限額1万5,000円の人が、1カ月で1万6,692円を負担したとすると、

1万6,692円-1万5,000=1,692円
が高額介護サービス費として戻ります。

世帯の全員が市区町村民税を課税されていない人(世帯)の自己負担上限額は2万4,600円です。この上限額は、世帯内に市区町村民税を払っている人がいる場合は、4万4,400円になるなど高くなります。

ちなみに、ショートステイを含む介護保険施設での食費や居住費、日常生活費などの自己負担分や、特定福祉用具の購入でかかった費用、住宅改修にかかった費用は、高額介護サービスの対象とはなりません。

申請先は自治体となり、申請の際には、申請書のほかに介護サービスを利用した領収書が必要です。この申請は、2年以内に行わないと時効によって権利が消滅してしまうので注意してください。

 

最長3カ月、給与の約3分の2が受け取れる介護休業給付

介護休業給付とは、両親や祖父母などを介護するために、会社を休んだときに受け取れる給付金です。

利用するには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

1. 現在、雇用保険の一般被保険者であり、かつ介護休業後も雇用され続ける見込みである

2. 家族を介護するために仕事を休んでいる(介護休業)

3. 休業開始日の前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上の月が12か月以上ある

4. 介護休業中の毎月の賃金が、休業開始前の賃金の80%未満である

5. 介護休業中の毎月の就業日数が10日以下である

要件を満たして利用することができれば、給与の67%、約3分の2の給付を最長3カ月(93日)受けることができます。

「気をつけたいのは、介護休業中に会社から有給や休業手当が支給されたり、月に何日かは出社するなどして、会社から賃金を受け取った場合です。介護休業中の月々の賃金は、休業前の賃金の80%未満でなくてはならないので、休業前と同じような給料をもらっている場合は給付を受けることはできないので注意してください」と高室さん。

介護休業が終了したときに、勤務先の会社が申請し、制度を利用した人が一括で受け取ります。

原則として、同じ介護対象者に対して介護休業給付を利用できるのは1回のみです。同じ家族の介護のために再度介護休業を取得しても、過去に給付を受けていれば給付を受けることはできません。

 

高齢者の財産などを守る成年後見制度

成年後見制度とは、認知症や知的障害、精神障害などで、判断能力が低下した人が詐欺などで不利益を被らないように、家庭裁判所によって選ばれた成年後見人が、身の回りに配慮しながら財産の管理や福祉サービス等の契約を行い、判断能力が低下した人の権利を守り生活を支援する制度です。

後見人には基本的には誰でもなれますが、約3割強は配偶者、親、子、兄弟姉妹及びその他親族が選任されています。それ以外では弁護士、司法書士、社会福祉士、行政書士が選任されています。

例えば、一人暮らしの高齢者が、後見人の同意なしに、悪質な訪問販売員にだまされて高額な商品を買わされてしまうなどの詐欺に遭った場合、成年後見制度を利用することによって、売買契約などを取り消すことができる場合があります。

成年後見制度には大きく分けて、法定後見制度と任意後見制度の2つの種類があります。

「法定後見制度」は、認知症などによって判断する能力が不十分になってしまった後、法律のルールによって後見人を指定する制度で、後見人(複数は可)がどのような権限(財産管理、身上監護)を持つかについては家庭裁判所が指定します。

一方、「任意後見制度」では、自分で判断ができるうちに、自分の判断能力が衰えてきた時に備えて、あらかじめ任意後見人を誰にするか、将来の財産管理や身の回りのことについてその人に何を支援してもらうか、自分で決めておくことができます。

高室さんは「任意後見制度では法定後見制度に比べて『どのような行為についてサポートを受けるか』について具体的に定めておくことが可能です。大きく財産管理と身上監護の2種類があり、身上監護とは生活や療養看護に関する事務のことです。介護をするわけではなくて、介護サービスの契約や介護施設への入所契約などを行います。これらは成年後見制度でも同じようにそれぞれについて行う事務は分かれています。

なお、任意後見の手続きを行う時点で本人に判断能力があることが条件になります」と話します。ちなみに、判断能力とは、保険や住宅、医療など、契約を締結できる能力のことを指します。

 

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取材・文/金野和子

 

 

高室成幸(たかむろ・しげゆき)さん

1958年京都市生まれ。日本福祉大学社会福祉学部卒。ケアタウン総合研究所代表、日本福祉大学地域ケア推進センター客員研究員、日本ケアマネジメント学会会員。介護施設、市町村やケアマネジャー団体、社会福祉協議会などを対象に研修を行い、施設マネジメントも手掛ける。『身近な人を介護施設にあずけるお金がわかる本』(自由国民社・監修)、『図解入門ビギナーズ 最新介護保険の基本と仕組みがよ~くわかる本』(秀和システム・監修)、『新・ケアマネジメントの仕事術』(中央法規出版・著)など著書多数。

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