"人生百年時代"を迎えました。誰もが健康で長生きすることを望んでいると思います。しかし、もし自分、あるいは大切な家族が「介護」が必要になったらと思うと不安になってしまいます。そこで、誰もが知っておきたい「介護保険」について介護に詳しい専門家の高室成幸さんにお聞きしました。
そもそも、介護保険ってどうしてできたの?
介護保険ができる2000年4月までは、自営業者などが加入する国民健康保険や民間企業の社員が加入する健康保険といった医療保険が高齢者福祉の役割を担っていました。
「本来、病院は治療をするところですが、寝たきりで自宅に帰れない、施設にもなかなか入れないとなると病院にとどまるしかなく、病院が"老人病院化"していたのです。結果、医療費がものすごくかかってしまいました。自宅に帰れたとしても、家族だけで介護するには限界があります。そこで、本人らしい自立した生活が送れるように、また介護する家族の負担を社会で支えていくことをめざして、2000年にできたのが介護保険制度です」と高室さん。
介護保険と健康保険との違いは?
公的な保険といえば、健康保険をイメージされる人も多いと思います。健康保険と介護保険は、どのように違うのでしょうか。
健康保険は被保険者全員が対象ですが、介護保険の対象者は65歳以上の要介護者、または40歳以上の特定疾病がある人です。
ちなみに、特定疾病とは下記の16の病気を指します。
1.がん(がん末期) ※
※医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る
2.関節リウマチ
3.筋萎縮性側索硬化症(ALS)
4.後縦靭帯骨化症
5.骨折を伴う骨粗鬆症
6.初老期における認知症
7.進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病(パーキンソン病関連疾患)
8.脊髄小脳変性症
9.脊柱管狭窄症
10.早老症
11.多系統萎縮症
12.糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
13.脳血管疾患
14.閉塞性動脈硬化症
15.慢性閉塞性肺疾患
16.両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
健康保険に加入している人は、保険証を窓口で提出すれば保険を利用できます。介護保険の場合は、65歳以上の介護を必要としている人、あるいは40歳以上の特定疾病の人が申請し、市区町村から要介護(もしくは要支援)と認定されることで、介護サービス(介護支援サービス)を利用できます。
健康保険の保険料は、原則、世帯単位で保険料を支払います。ただし、後期高齢者医療に加入する75歳以上の人は個人単位で支払うことになります。一方、介護保険の保険料は、40歳以上の人が支払います。40歳から64歳までの人は、健康保険の保険料と一緒に徴収されますが、65歳以上の人は健康保険料とは別に、個人単位で介護保険料を支払っています。
介護保険でどんなことをしてくれるの?
介護保険のサービスを利用するためには、まず要介護認定の申請をします。要介護認定とは、介護される人が、どの程度の介護を必要としているかを判定するもので、認定の結果に応じて、対象の介護保険給付や使えるサービスの種類が決まります。
実際、介護される人が、自宅に住んでいるのかあるいは特別養護老人ホームなどの施設に住んでいるのかによって、受けられるサービスは異なります。
介護保険では、ほかにも、車イスや介護ベッドなどの福祉用具をレンタルしたり、自宅の階段に手すりの設置などの住宅改修(バリアフリー化)をした際に補助金(上限20万円)を受け取ることなどができます。
介護保険は、これまで家族が行っていた介護を社会全体で支えていくためにできた公的な保険であり、今後私たちに欠かすことができない重要な制度であることは間違いありません。
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取材・文/金野和子