"人生百年時代"を迎えました。誰もが健康で長生きすることを望んでいると思います。しかし、もし自分、あるいは大切な家族が「介護」が必要になったらと思うと不安になってしまいます。そこで、誰もが知っておきたい「介護保険」について介護に詳しい専門家の高室成幸さんにお聞きしました。
前の記事「介護保険って何? どんなことをしてくれるの? 健康保険と比較してみると.../介護保険(1)」はこちら。
「介護保険」を知るためには、やはりその仕組みを理解しておくことは大切です。どのような仕組みで成り立っているのでしょうか?
介護保険制度の仕組みは?
介護保険制度は、40歳以上の加入者(被保険者)と、加入者が住んでいる自治体(保険者)、そして介護保険サービスを提供する事業者の3者で成り立っています。
年齢によって何が違うの?
加入者は40歳以上の人ですが、年齢によって2種類に分類されます。
65歳以上の人は、第1号被保険者となります。保険料はその人の所得に応じて市町村が決めます。公的年金が18万円以上の人は、年金支給月(4月、6月、8月、10月、12月、2月の年6回)に、年金から天引きされる特別徴収となるため、介護保険料を差し引いた額の年金が支給されます。
特別徴収以外の人は市区町村から送られてくる納付書や口座振替で納めることになります(普通徴収)。各市町村によって異なりますが、多くの場合6月(第1期)から翌年3月(第10期)までの年10回払いとなっており、納期限は各納付月の末日です。金融機関はもちろん、多くのコンビニでも納付することができます。
40歳以上65歳未満で、健康保険などの公的な医療保険に加入している人は第2号被保険者となります。保険料は、加入している医療保険の算定方法に基づいて決まります。
介護保険料の財源は?
介護保険料の財源は、40歳以上の人の保険料と税金がそれぞれ2分の1ずつで構成されています。つまり、保険料が50%、税金が50%の割合です。
50%の保険料の内訳は、一般的に、40歳から64歳までの第2号被保険者の保険料が27%を占め、65歳以上の第1号被保険者の保険料が23%を占めます。
50%の税金の内訳は、国の負担が25%、都道府県と市町村はそれぞれ12.5%ずつ負担します。
全国の市町村は一律12.5%を負担しますが、例えば75歳以上の後期高齢者の比率が高いと介護給付費が増える傾向にあります。また、所得の低い被保険者の割合が高いと、介護保険料を高くしないと必要な保険料を集めることができない事態となります。これらの問題を解決するため、国が負担する25%のうちの5%は「調整交付金」として、市町村の財政力の格差を調整するために交付されます。
サービス事業者が提供するサービスの種類とは?
介護サービスを提供するサービス事業者は、提供するサービスの種類ごとに決められた基準をクリアし、自治体の指定を受ける必要があります。
サービスの種類は、一般的に在宅サービス、施設サービス、地域密着型サービスの3種類です。
在宅サービスには、訪問介護や通所介護などがあります。
施設サービスには、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などがあります。
地域密着型サービスには、小規模多機能型居宅介護や認知症グループホーム、定期巡回や随時対応型訪問介護などがあります。
保険料が払えなかったらどうなるの?
介護保険料は、公的年金が18万円以上の人は年金から天引きされるので保険料を滞納する可能性は低いでしょう。しかし、それ以外の納付書で支払っている人の場合、ついうっかり払い忘れたりすることもあるでしょう。また、もらえる年金額自体が少ないと介護保険料を支払うことが難しい場合も出てきます。
高室さんは「保険料を滞納すると、滞納期間に応じてペナルティが課せられ、納付期限を過ぎると延滞金が請求されます。滞納期間が1年以上になると、サービスの利用料の全額をいったん自分で立て替えて支払うことになります。ただ、申請すると後で9割から7割が払い戻しされます。また、滞納期間が1年6カ月以上になると、申請による払い戻し金額の一部などが一時的に差し止めされ、滞納していた保険料と相殺されます。滞納期間が2年以上になると、自己負担の割合が3~4割に引き上げられます。また、高額介護サービスの払い戻しが受けられなくなるので注意してください」と話します。
介護保険は保険料と税金で成り立っています。税金や保険料を滞納すると、介護保険の制度自体が危うくなるかもしれません。いざ、自分が介護が必要なときに十分なサービスを受けられるように、滞納することなく支払うことが大切です。
次の記事「介護保険の利用が必要になったらどうすればいい? 申請方法を詳しく解説/介護保険(3)」はこちら。
取材・文/金野和子