"人生百年時代"を迎えました。誰もが健康で長生きすることを望んでいると思います。しかし、もし自分、あるいは大切な家族が「介護」が必要になったらと思うと不安になってしまいます。そこで、誰もが知っておきたい「介護保険」について介護に詳しい専門家の高室成幸さんにお聞きしました。
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介護をしていると、様々なお金がかかります。これらの費用の中には、確定申告することで医療費控除として認められるものがあります。どのようなものが対象になるのでしょうか?
医療費控除の対象となるものは?
在宅でサービスを受けている場合、訪問看護、訪問入浴介護、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション(デイケア)、ショートステイ、定期巡回・随時対応型訪問介護看護(一体型事業所で訪問看護を利用する場合)などのほか、通所リハビリテーションの食費なども控除の対象です。
対象となる金額は、サービス利用にかかる1割(または2割や3割)の自己負担額です。
施設系サービスの場合、特別養護老人ホームや地域密着型介護老人福祉施設などが対象で、サービス利用に1割(または2割や3割)の自己負担額がかかると、介護費・居住費・食費にかかる自己負担額の合計の2分の1が控除されます。
施設系サービスのうち、介護老人保健施設や介護療養型医療施設(介護医療院)も対象となり、施設サービス費(介護費、食費、居住費)として支払った自己負担額が全額控除されます。
在宅や施設系サービスで、おむつを用意した場合、医師のおむつ使用証明書があれば控除の対象となります。
ちなみに、通所リハビリテーションや短期入所療養介護のために、介護老人保健施設などに行くための交通費も対象です。
医療費控除を受けるために必要な書類は?
確定申告で医療費控除を受ける場合、申告書と一緒に提出しなければいけない書類があります。
【在宅サービスの場合】
訪問して介護などをしてくれているサービス事業者が発行する領収書が必要
【施設サービスの場合】
特別養護老人ホームなどの施設などが発行する領収書が必要
高室さんは「在宅や施設などでおむつ代がかかった場合は、おむつ代の領収書と医師が発行する『おむつ使用証明書』が必要です」と話します。
通所リハビリテーションや短期入所療養介護のために、介護老人保健施設などに行くための交通費も、医療費控除の対象となります。タクシー代は、体調がすぐれなかったりして公共交通機関が使えないなど、やむを得ないときには認められる可能性があります。
医療費控除の対象となる金額の計算方法は?
医療費控除の対象となる金額を計算するために、まず1月1日から12月31日までにかかった、医療費控除の対象となる介護費用を集計します。
次に、高額介護サービス費を申請して、払い戻しを受けた場合はその金額を確認しておきましょう。
医療費控除の対象となる介護費用から、高額介護サービス費の払い戻し額を差し引きます。
これで算出された金額が、医療費控除の対象となる金額です。
【計算方法】
医療費控除の対象となる介護費用-高額介護サービス費の払い戻し額=医療費控除の対象となる金額
このように、基本的に高額介護サービス費または保険からの払い戻しなど、利用料の補填がある場合は、支払った金額から補填される額を差し引いて申告するようにしましょう。
医療費控除で注意することは?
医療費控除は、自分もしくは、自分と生計を一にする配偶者や親族のために支払った医療費(介護費用を含む)が対象です。
高室さんは「その年の1月1日から12月31日までに、実際に支払った医療費(介護費用を含む)が対象です。例えば、その期間に介護サービスを受けていても、支払いが済んでいないものは対象外となります。また、複数年分を合算することもできないので注意してください」と話します。
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取材・文/金野和子