"人生百年時代"を迎えました。誰もが健康で長生きすることを望んでいると思います。しかし、もし自分、あるいは大切な家族が「介護」が必要になったらと思うと不安になってしまいます。そこで、誰もが知っておきたい「介護保険」について介護に詳しい専門家の高室成幸さんにお聞きしました。
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介護保険では介護サービスが利用できる以外に、車イスなどの福祉用具の貸与(レンタル)や住宅改修の費用の補助もあります。その内容についてみていきましょう。
介護で必要な福祉用具の貸与
在宅などで介護する場合に、必要となる福祉用具がありますが、福祉用具とはどういうものを指すのでしようか。
介護保険法において福祉用具は、「心身の機能が低下し日常生活を営むのに支障がある要介護者等の日常生活上の便宜を図るための用具及び要介護者等の機能訓練のための用具であって、要介護者等の日常生活の自立を助けるためのもの」という定義がされています。
高室さんは「福祉用具を購入した場合、故障したら自分で対処しなければいけないが、レンタルならレンタル業者が対応してくれますし、何よりとても大切なフィッテイングへの対応が丁寧です。福祉用具はレンタルをおすすめします」と話します。
■保険給付の貸与の対象となる福祉用具
・車イス
・車イス付属品
・歩行器
・手すり
・スロープ
・特殊寝台
・特殊寝台付属品
・歩行補助つえ
・体位変換器
・床ずれ予防用具
・認知症老人徘徊感知器
・移動用リフト
・自動排泄処理装置
以上、13種類です。
特殊寝台とは、床板が3つないしはそれ以上に分割されていて、背中を支えるところが起き上がるなど、必要に応じた姿勢をとることができるベッドのことです。
体位変換器とは、身体の下に棒状や板状などの用具を差し込んで、少ない力で身体を動かすことができるようにする器具です。主に、寝たきりの人などに利用されます。
要介護度によってレンタルできる福祉用具が異なる
上記の13種類の福祉用具は、介護を必要としている人誰もがレンタルできるわけではなく、要介護度によっては利用できないものもあります。
要介護度にかかわらずレンタルできるのが、「手すり」「スロープ」「歩行器」「歩行補助つえ」です。
要介護度2と3の人は、原則として上記の4つに加え、「自動排泄処理装置」以外のものをレンタルできます。
原則として、13種類すべての福祉用具をレンタルできるのは、要介護度4と5の人です。
「ちなみに、福祉用具のレンタル代は、レンタル費用の1割となり、一定以上の所得がある人は2割または3割を負担することになります。それとレンタル業者によって、料金は微妙に異なるのでよく調べましょう。ただし、高いからダメではなく、どれだけ丁寧に説明&アフターフォローしてくれるかがポイントです」と高室さん。
簡易浴槽などの購入費用は保険対象
福祉用具の中で、購入費用が保険給付の対象となるものがあります。
■購入費用が保険給付の対象となる福祉用具
・腰掛便座
・自動排泄処理装置の交換可能部品
・入浴補助用具
・簡易浴槽
・移動用リフトのつり具の部分
簡易浴槽など、人が利用したものを使うのに抵抗があるものなどは「特定福祉用具」として購入が給付の対象となります。
これらの福祉用具は、特定福祉用具販売の事業指定を受けた業者から購入した場合、毎年4月1日から1年間10万円までの購入費を上限に、購入費の9割が保険給付となり、自己負担は1割ですみます。レンタルの際と同様に、一定以上の所得がある人は2割または3割を負担することになります。
手すりの取り付けなどの住宅改修も保険対象
介護を必要としている人が、自宅で生活し続けるために必要となるのが住宅改修です。
■住宅改修の対象となる工事
・手すりの取り付け
・段差や傾斜の解消
・滑りの防止
・移動しやすい床材への変更
・引き戸等への扉の取り替え
・洋式トイレ等への便器の取り替え
・その他、各工事に付帯する工事
これらの改修をする場合は、市区町村の窓口で事前に届け出をする必要があります。審査の結果、改修が認められれば、総額20万円を上限に支給されます。
住宅改修の消費者トラブルが増えているため、介護保険にかかる住宅改修の事業者を市町村指定する自治体が増えていまので、市町村か地域包括支援センターに問い合わせましょう。
1つの住宅について1回が原則となっていますが、引っ越した場合あるいは要介護度が3段階以上上がった場合は、もう一度申請することができます。
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取材・文/金野和子