「サ高住」って何がよいの? 有料老人ホームとの違いとは?/介護施設

男性の平均寿命は80.98歳、健康寿命は72.14歳、女性の平均寿命は87.14歳、健康寿命は74.79歳です(厚生労働省の2016年の調査より)。健康寿命とは"日常生活に制限のない期間の平均"のこと。平均寿命と健康寿命との差は、裏を返せば日常生活に制限がある期間のことで、おおよそ10年あります。この10年をどこで、どのように暮らすのか。自身にとって、また親や子ども、夫・妻など家族にとって重要な問題です。

そんななかでの選択肢の一つが「介護施設」です。特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅など昨今は種類が増えて利用者の選択肢が広がっています。それぞれの施設のメリットやデメリット、施設を選ぶときのポイントなどを、ケアタウン総合研究所の高室成幸さんに伺いました。

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前の記事「親に合う有料老人ホームの見つけ方とは?/介護施設(4)」はこちら。

 

自宅での生活に不安がある高齢者を見守る、バリアフリーの「賃貸住宅」

親と離れて暮らしている子どもにとって「親が安全に暮らせているか、倒れていないか」など、心配は尽きません。平均寿命が延びるにつれ、80歳以上になってからの生活にはさまざまな不安が生じます。また、単身高齢者は孤独死などを不安視され賃貸契約を結びにくいなどの問題もあります。

そんな状況の中、高齢者の単身世帯、夫婦世帯が安心して暮らせる住まいの確保のため2011年10月に始まった制度が「サービス付き高齢者向け住宅」、通称・サ高住(さこうじゅう)です。2018年10月末時点で登録数は23万6428戸(※)。その数は年々増加しています。

※サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム「サービス付き高齢者向け住宅登録状況」より

サービス付き高齢者向け住宅の基準は法令により決まっています。部屋の床面積は原則25㎡以上。バリアフリー構造で、各部屋に原則として台所、トイレ、浴室、洗面設備や収納設備を備えています。ただし、リビングやキッチンなど共同利用できる設備が整っている場合は18㎡以上でも可とされています。安否確認サービスや、社会福祉士などのケアの専門家による生活相談サービスが義務付けられた賃貸住宅です。

サービス方法は施設により異なりますが、居室訪問や電話などによる安否確認、緊急用コールなど、もしものときに備えています。独り暮らしに不安がある、身体機能が低下してきたので見守りサービスが欲しいなど、基本的に自立している高齢者に向けた施設です。

施設による個別サービスとして食事や家事援助などの生活支援サービスが付いているところもあります。またレストランや温泉設備、シアタールームなどを整備しているところもあります。

入居対象は60歳以上または要支援・要介護認定を受けている方となっています。

 

◆介護が必要になった場合は外部事業者と契約します

「サ高住は基本的に自立して生活できる方を対象としています。しかしここ数年のサ高住の急増で、運営側も空き部屋をつくりたくないということから要介護の認定を受けても継続して入居できる、要介護度が高くとも受け入れる施設が増えてきています」(高室さん)

サ高住でも介護保険の「特定施設入居者生活介護」の指定を受けている施設は、有料老人ホームのように施設内でケアを受けることができます。しかし指定を受けていない施設が多く、その場合は介護が必要になったら自身で外部事業者と契約し、在宅介護と同じように介護保険サービスの訪問介護サービスや通所介護サービスを利用します。

ただし、外部事業者といえど、事業所が同じ建物内や同一敷地内の訪問介護サービスや通所介護サービスを半ば強制的に利用しなければならない場合もあります。これまで利用していた他の事業所を継続して利用したいなら、その希望を伝えましょう。
なお、独自の入居条件を設けている例も珍しくないので細部まで確認しましょう。

 

◆メリットは初期費用が抑えられること

・有料老人ホームに比べて初期費用が安い。
・家賃、居住空間に幅があり選択肢が広い。
・入退去がしやすい。
・有料老人ホームに比べて生活が自由。
・暮らしやすい設備と生活支援サービスが整っている。

 

サ高住のメリットは有料老人ホームに比べて費用が安いことです。前払金(入居一時金)は基本的に不要で、敷金、家賃、サービスの対価のみのため初期費用を抑えることができます。権利金、礼金、更新料は法令により禁止されています。
月額利用料の目安は9万~17万円(家賃・管理費・サービス費の合計額)。

「有料老人ホームよりも施設基準がゆるいため、新築だけではなく施設によっては社員寮やビジネスホテルだったものをリフォームしているところも。廊下が狭い、トイレが高齢者向けになっていないというところもあり、その分家賃が安いということもあります。設備などは入居前にしっかりチェックすることをおすすめします」(高室さん)

また、基本的に賃貸住宅なので、外出や外泊、来客や来客者の宿泊などもでき、元気なうちに暮らす施設と考えると有料老人ホームよりも自由度が高いです。

 

◆デメリットは夜の見守り体制

・夜の見守りスタッフは専門職が義務付けられていない。
・基本的に24時間の介護は受けられない。
・要介護度が高くなると退去しなければいけないことがある。

サ高住では昼間は専門職による見守りが義務付けられていますが、夜間はそうではありません。
「有料老人ホームは24時間専門スタッフがいますが、サ高住の場合は夜間の見守りは緊急通報システムなどで警備会社にお願いするなど専門職でないことも多い。防犯や健康上の理由から夜間に不安を抱える高齢者は多いです。緊急時の対応は有料老人ホームよりは劣ります」と高室さん。

また、介護や看取りの体制が整っておらず、要介護度が高くなると退去しなければいけないケースもあり、介護が必要になったときの暮らしに課題があります。

 

◆入居の手順

施設見学をして入居を申し込みます。施設スタッフが入居者やその家族と面談して現在の健康状態や生活状況などを確認し、入居の審査を経て契約になります。
有料老人ホームと異なり、サ高住は「賃借契約」になります。
施設の情報はネットでも検索でき、公的な検索システムにもあります。

 

◆サービス付き高齢者向け住宅の概要(登録基準)

○規模・設備
・各専用部分の床面積は、原則25㎡以上(居間、食堂、台所その他の住宅の部分が高齢者が共同して利用するために十分な面積を有する場合は18㎡ 以上)。

・各専用部分に台所、水洗便所、収納設備、洗面設備、浴室を備えたものであること(共用部分に共同して利用するため適切な台所、収納設備または浴室を備えることにより、各戸に備える場合と同等以上の居住環境が確保される場合は、各戸に台所、収納設備または浴室を備えずとも可)。

・バリアフリー構造であること(段差のない床、浴室などの手すり設置、通路の有効な幅が780㎜〈柱等の箇所にあっては 750 ㎜〉以上など)。

○費用
敷金、家賃、サービスの対価のみ。権利金、礼金、更新料等の徴収は禁止。
※前払金を受領する場合は、前払金の算定の基礎、返還債務の金額の算定方法の明示が必要。入居後3カ月以内に契約を解除、または入居者が亡くなったことにより契約が終了した場合、前払金(契約解除までの日数×日割計算した家賃等を除く)を返還する決まりがあります。

○サービス
ケアスタッフが日中は建物に常駐し生活相談および生活支援サービスを提供します。
※介護サービスはサ高住の登録基準になっていないため、介護が必要になった場合は外部サービスと契約するなど施設により異なります。

 

次の記事「認知症高齢者グループホームは専門的な認知症ケアが受けられるのが魅力!/介護施設(6)」はこちら。

取材・文/ほなみかおり

 

 

高室成幸(たかむろ・しげゆき)さん

1958年京都市生まれ。日本福祉大学社会福祉学部卒。ケアタウン総合研究所代表、日本福祉大学地域ケア研究推進センター客員研究員、日本ケアマネジメント学会会員。介護施設、都道府県や市町村のケアマネジャー、地域包括支援センターなどを対象に研修を行い、施設職員対象も手掛ける。『図解入門ビギナーズ 最新介護保険の基本と仕組みがよ~くわかる本』(秀和システム・監修)、『もう限界!シリーズ全10巻』(自由国民社・監修)、『新・ケアマネジメントの仕事術』(中央法規出版・著)など著書多数。

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