男性の平均寿命は80.98歳、健康寿命は72.14歳、女性の平均寿命は87.14歳、健康寿命は74.79歳です(厚生労働省の2016年の調査より)。健康寿命とは"日常生活に制限のない期間の平均"のこと。平均寿命と健康寿命との差は、裏を返せば日常生活に制限がある期間のことで、おおよそ10年あります。この10年をどこで、どのように暮らすのか。自身にとって、また親や子ども、夫・妻など家族にとって重要な問題です。
そんななかでの選択肢の一つが「介護施設」です。特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅など昨今は種類が増えて利用者の選択肢が広がっています。それぞれの施設のメリットやデメリット、施設を選ぶときのポイントなどを、ケアタウン総合研究所の高室成幸さんに伺いました。
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住み慣れた地域で少人数のグループで家庭的な雰囲気に包まれた
専門的な認知症ケアを受ける
65歳以上の7人に1人が認知症といわれている日本。2025年には約5人に1人が認知症になるという推計もあります。そんななか、注目を集めている介護施設が「認知症高齢者グループホーム」です。
認知症高齢者グループホームは、介護保険サービスの一つ「認知症対応型共同生活介護」が行われる施設です。認知症の人が5~9人(1ユニット)で介護スタッフと共に共同生活をしながら、できるだけ自立した生活を送ります。少人数での共同生活(多くは2ユニット)で、家庭的な環境で暮らすことができるのが特徴です。
◆日々の"暮らし"の中でケアを受けます
認知症高齢者グループホームは、長年住み慣れた地域で、利用者本人の意思を中心にして生活をする中で認知症のケアをする施設です。ホームには認知症の知識を持った専門スタッフが24時間常駐し、入居者は料理や洗濯など本人ができる範囲で役割を受け持って暮らします。
「家庭的な雰囲気の中、少人数でケアが行われるので、利用者は落ち着いて生活を送ることができます。例えば要介護度が高く入居者が多い特別養護老人ホームは、介護がシステマティックに行われるという側面があります。ところがグループホームでは"暮らす"という視点でケアが行われます。要介護度も低くアクティブな方が多いので、外に散歩に行きたい、近所の人や子どもたちと話がしたいなど、本人がこうしたいと思うことをかなえてくれる...という利用者目線に立った、認知症に特化したケアを受けることができるのが魅力です。
一方で、利用者と介護スタッフとの距離が近いので、介護スタッフの力量が問われる施設でもあります」(高室さん)
◆有料老人ホームに比べて費用が抑えられます
入居対象は認知症の診断を受けている要支援2から要介護5までの方。地域密着型のサービスなので施設のある市区町村に住民票があることが条件になります。食事や入浴などのサポートや機能訓練などを受けることができます。
また、グループホームは有料老人ホームに比べて費用も安く抑えられるところが多いです。月々にかかる費用は介護保険サービス費の自己負担分、家賃や光熱費、食費で、月額の目安は合計12万~18万円。契約プランや要介護度により施設ごとに異なり、前払金(入居一時金)が必要な施設もあります。他にレクリエーションの実費が必要となります。
認知症専門のケアが受けられ穏やかに暮らすことができるホームですが、デメリットもあります。グループホームでは医療ケアは行われないため、痰の吸引や胃ろうなどの医療行為が必要な方は入居ができません。病気になるなどして共同生活が難しくなった場合は退去しなければならないことがあります。
◆概要
○定員
5~9人を1ユニット(グループ)とし2ユニットまで。
○設備
原則として個室(4.5畳以上)。他に居間、キッチンや食堂、浴室など共用空間がある。
○介護従事者
日中は利用者3人に1人、夜間はユニットごとに1人を配置。
グループホームの数は年々増加していて、現在約1万3000施設(※)ありますが、定員が少ないため希望してもすぐ入居できない場合もあります。入居には施設見学後、申し込みをして施設スタッフと面談し、認知症の状態などを確認。入居可能となったら契約をします。
※ 厚生労働省『平成29年介護サービス施設・事業所調査の概況』より。
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取材・文/ほなみかおり