介護が必要になったとき、自宅に住み続けながら介護を受けることを「在宅介護」といいます。内閣府の調査によると、在宅介護を望む人は男女とも7割を超えています。今後、親や家族、配偶者、そして自分の介護などに、直面することもあるでしょう。在宅介護を行う上で、どのように介護保険を使ったらいいのか、ケアマネジャーとの関係や家族の関わり方などについて、現役の主任ケアマネジャーである田中克典さんに聞きました。
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高齢者が安心して地域で暮らせるように、独自の高齢者向けサービスを行っている自治体があります。内容は自治体によってさまざまです。要介護認定を受けている人が対象のサービスもあれば、高齢者なら誰でも利用できるサービスも。どこの自治体でも実施されているわけではなく、自治体によっては行われていなかったり、対象者が限られていることもあります。よく行われているサービスの例を紹介します。
●調理や買い物がむずかしいときは「配食サービス」を利用
毎日の食事は生きていくための基本です。体が不自由で食事の準備や買い物などができないとき、介護保険の訪問介護を利用してヘルパーに頼む以外に、お弁当を自宅まで届けてもらう「配食サービス」を利用する方法があります。この配食サービスを自治体独自のサービスとして行っているところがあります。利用回数が1日1回で週4日までなどと決まっていることが多いです。家まで届けて手渡すため安否確認にもなっています。
「介護保険では、通常、同居家族がいると訪問介護の生活援助でヘルパーを頼めないのですが、配食サービスはそういう人の受け皿としての一面もあります。妻が寝たきりになってしまったけれど夫は食事を作れない、というようなときにも利用されています。ヘルパーに比べて費用面でも安く抑えることができるようです」と田中さん。費用は1人分1食500円前後で、料理の柔らかさも、普通食から刻み食、舌でつぶせる柔らかいものまで、利用者の希望に合わせたものを届けてもらえることも。いまは民間の宅配弁当業者も増えていて、そのような業者と契約して配達を頼むこともできます。
●「紙おむつ給付」は助かるサービス
要介護度が高い人や認知症の人などを対象に、紙おむつを給付している自治体があります。年に2回支給されるところや、月額5,000円の範囲内まで支給を受けられるところなどさまざまです。自治体によっては一定以下の所得の人を対象としていたり、紙おむつに加えて尿取りパッド、使い捨て介護シーツ、清拭剤(せいしきざい)(皮膚の汚れをふき取る洗浄剤)などが給付される場合もあります。
●交通が不便な地域で高齢者の足となる「乗り合いタクシー」
自治体が運営に関わる「乗り合いタクシー」が、全国的に増えています。登録した人が電話で予約すると、その時間にタクシー車両が自宅または近くの停留所に来て、自治体内ならどこへでも均一料金で乗せてくれる、というようなシステムです。乗り合い制なので、途中で他の人が乗ってくることもあります。1人1乗車200~300円ぐらいで利用できることが多く、要介護認定を受けている人と付き添いの人は100円で乗れる自治体もあります。
自治体によっては、自治体内を走るバスの料金が年齢によって1乗車100円などの特別運賃や無料で利用できるところがあります。また、要介護認定を受けている人が病院への通院に自治体で契約しているタクシーを使うと、利用料の半額程度(上限額あり)が助成される自治体もあり、交通の便があまりよくない地域では助かるサービスだといえます。
●その他の高齢者向けサービス
・家でヘアーカットができる「訪問理美容サービス」
要介護や要支援の人などで、理容店や美容院に行くことが難しい人を対象に、理容師や美容師が自宅に来てカットをしてくれるサービスです。実施している自治体では1年に4?6回程度利用できることが多く、カット代は実費のところや自己負担額が2,000円のところなどがあります。
・急病などのときの備えに「緊急通報システム」
1人暮らしの高齢者などの家に緊急通報装置を設置。急病のときに緊急通報装置のボタンを押すと救護を求められます。
・家庭で使える道具がもらえる「日常生活用具の給付」
1人暮らしの高齢者に電磁調理器を給付したり、要介護認定を受けていて自宅で暮らす高齢者や1人暮らしの高齢者に、自動消火器、火災報知器の給付を行う自治体があります。所得に応じて費用負担がある場合も。
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取材・文/松澤ゆかり