83歳、要介護2、一人暮らしでも自宅で暮らすことはできる/介護破産(30)

83歳、要介護2、一人暮らしでも自宅で暮らすことはできる/介護破産(30) pixta_7255931_S.jpg毎週金、土、日曜更新!

介護のために資産を失う「介護破産」が最近話題となっています。実は介護破産の原因には、単に資産の多寡だけでなく、介護に関する「情報量」も大きく関わってくるのです。
本書「介護破産」で、介護で将来破綻するような悲劇を防ぐための方法を学んでいきましょう。

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先日、ある要介護高齢者の自宅へ本書の取材のために訪ねた。中田かおるさん(仮名、83歳)は、10年前に夫が亡くなって以降、持ち家の古い一軒家に一人で暮らしている。多少の預貯金は有しているものの、毎月支給される遺族年金10万円で細々と日々を送っている。彼女はケアマネジャーと相談し、それほど経済的に負担とならない在宅介護のケアプランを組んでもらったという。そのため、介護と医療に費やす費用は、毎月2万6000円程度で済むようになっている(図3 -4)。

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中田さんの要介護度は2。杖歩行はできるものの、買い物などの外出は転倒の危険があり、難しい。食事やトイレは自力で可能だが、風呂掃除は困難であり、自宅では入浴していない。自宅から4時間ほどの遠方に暮らす一人娘が、毎月1回、泊まりがけで彼女の生活を見守っている。そのため、日々、ヘルパーが中田さんの身の回りのケアをしているのが実態だ。ヘルパーは、掃除や食事づくりを主としたケアを提供している。

中田さんは入浴と社会とのつながりを維持することを目的に、週3回、デイサービスに通っている。デイサービスへの通所日はヘルパーが来ないため、夕食は1食600円の配食弁当だ。カロリー計算がされ、メニューもバラエティーに富んでいるものの、ヘルパーがつくってくれる食事のほうが、中田さんにとって「食の楽しさがある」とのことであった。

彼女のように、ヘルパーが定期的にケアに入ることで、要介護者が一人で日常生活を送ることは十分可能となる。
要介護者にとって、ヘルパーによる住環境の整備は、転倒予防の観点から要介護度の重度化を防止し、在宅介護高齢者施設への移動をとどめることにつながっている。

片づけがままならない部屋に住んでいる要介護者の場合、少しの障害物でも転倒し、寝たきり状態になってしまう危険性が高いのだ。

  

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結城 康博(ゆうき・やすひろ)
淑徳大学総合福祉学部教授。1969年生まれ。社会福祉士、介護福祉士、ケアマネジャー。地域包括支援センターおよび民間居宅介護支援事業所への勤務経験がある。おもな著書に『在宅介護――「自分で選ぶ」視点から 』(岩波新書)、『孤独死のリアル』(講談社現代新書)、『介護入門 親の老後にいくらかかるか? 』(ちくま新書)など。

村田くみ(むらた・くみ)
ジャーナリスト。1969年生まれ。会社員を経て1995年毎日新聞社入社。「サンデー毎日」編集部所属。2011年よりフリーに。2016年1月一般社団法人介護離職防止対策促進機構(KABS)のアドバイザーに就任。おもな著書に『書き込み式! 親の入院・介護・亡くなった時に備えておく情報ノート』(翔泳社)、『おひとりさま介護』(河出書房新社)など。

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『介護破産』
(結城 康博、村田 くみ/ KADOKAWA)

長寿は「悪夢」なのか!? 介護によって始まる老後貧困の衝撃!
介護のために資産を失う「介護破産」が最近話題となっています。本書では現在介護生活を送っている人々の生の声をルポしつつ、介護をするにあたり知っておきたいお金のこと、法律面のことなどに言及。介護で将来破綻するような悲劇を防ぐための方法論を記した一冊です。

 

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