ワンルームマンションが有料老人ホームに! 都心部の新たな介護ビジネス/介護破産

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介護のために資産を失う「介護破産」が最近話題となっています。実は介護破産の原因には、単に資産の多寡だけでなく、介護に関する「情報量」も大きく関わってくるのです。
本書「介護破産」で、介護で将来破綻するような悲劇を防ぐための方法を学んでいきましょう。

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前の記事「高級なイメージのある「有料老人ホーム」は生活保護受給者も利用している/介護破産(34)」はこちら。

新たな介護ビジネス

先日、不動産関係者に話を聞いたのだが、都心部を中心に古いアパートを活用した介護ビジネスが普及しつつあるという。新たに有料老人ホームを建設するには、膨大な初期費用がかかる。しかも、入居金としての費用負担が大きいため、一定の層しか顧客として見込めない。

いっぽう、都心部ではバブル時に多くのワンルームマンションが投資目的で建設されたが、現在は人気薄となり、こうしたマンションを購入していた家主は借手がみつからず困っている現状がある。そこに介護ニーズをタイアップしたビジネスが展開されているのだ。

その仕組みは、まずマンションを管理運営している不動産会社が、民間介護事業者にワンルームマンションの1室を無料で提供し、ヘルパー事業所(訪問介護事業所)を開設してもらう。そして、介護が必要な入居者を不動産会社が中心となって募集する。たとえば、介護関係のネットワークを通じて施設入居待機者から勧誘するのである。そして、入居した要介護者に対して介護保険サービス、ヘルパーサービスなどを提供していく。

集合住宅での介護は一部報酬が減算されるのだが、訪問介護事業者にとってもマンションに要介護高齢者が集中すれば、ヘルパーの移動時間(コスト)が軽減でき、事業収入でもプラスが見込める。しかも、定期的に複数回サービスを提供できる。通常の訪問介護(ヘルパー)サービス事業所だと、1件あたり往復15分以上の移動時間がかかり、その分の人件費も支払わなければならないため、大きな収益が見込めないのだ。

そのほかにも在宅介護サービスや配食弁当を調整することで、毎月12万円程度の経費で介護サービス付きの居住環境が整えられる。いわば「在宅介護」は規制の網が緩やかなことから、多様なビジネスモデルが生まれやすい。

いっぽう、先日、本書の取材のために関西地区の閑静な住宅街に高級有料老人ホームを訪ねた。玄関は高級ホテルのロビーを思わせる雰囲気であった。

入居金は2000~5000万円。毎月の費用は、食費等の雑費を含めて約30万円であった。もちろん全室個室。10畳程度の1Kマンションをイメージしてもらえばいい。ただし、入居金5000万円の部屋は3LDKの間取りであった。

24時間看護師が常駐し、寝たきりになっても完全介護の施設で、医療的ケア(吸引、経管栄養等)が必要な人も受け入れ可能である。当然、入居している高齢者は、それなりの収入や資産のある人である。

なお、有料老人ホームは、終身利用権を有しているのであって、マンションのように物件を購入しているわけではない。途中で退去もしくは死亡した場合には、入居年数によって、支払った入居金が一部返済される。

食事は、朝食に限り和食もしくは洋食を選択でき、外食する場合には、事前に申し出れば、その分の費用は取られない。また、直接、厨房で委託業者が調理、管理栄養士も常駐し、カロリー計算等もしっかり行なっているという。なお、電気代等の光熱費は、管理費に含まれているとのことであった。

  

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結城 康博(ゆうき・やすひろ)
淑徳大学総合福祉学部教授。1969年生まれ。社会福祉士、介護福祉士、ケアマネジャー。地域包括支援センターおよび民間居宅介護支援事業所への勤務経験がある。おもな著書に『在宅介護――「自分で選ぶ」視点から 』(岩波新書)、『孤独死のリアル』(講談社現代新書)、『介護入門 親の老後にいくらかかるか? 』(ちくま新書)など。

村田くみ(むらた・くみ)
ジャーナリスト。1969年生まれ。会社員を経て1995年毎日新聞社入社。「サンデー毎日」編集部所属。2011年よりフリーに。2016年1月一般社団法人介護離職防止対策促進機構(KABS)のアドバイザーに就任。おもな著書に『書き込み式! 親の入院・介護・亡くなった時に備えておく情報ノート』(翔泳社)、『おひとりさま介護』(河出書房新社)など。

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『介護破産』
(結城 康博、村田 くみ/ KADOKAWA)

長寿は「悪夢」なのか!? 介護によって始まる老後貧困の衝撃!
介護のために資産を失う「介護破産」が最近話題となっています。本書では現在介護生活を送っている人々の生の声をルポしつつ、介護をするにあたり知っておきたいお金のこと、法律面のことなどに言及。介護で将来破綻するような悲劇を防ぐための方法論を記した一冊です。

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