要介護にならないために。「社会との交流」「食事」「運動」が介護予防の3か条!

ご両親が元気なうちは、「介護なんて当分先のこと」と他人ごとのようにお考えの方も多いでしょう。しかし介護は突然やってきます。想定もしなかった事態に戸惑い、余計な負担まで背負い込んだ結果、心身の健康を害してしまうこともあるのです。突然の事態に動揺しないためにも、いまから準備をしておくことが大切です。

そこでうまく乗り切るための心構え、準備しておくべきこと、介護サービスを受ける方法、介護サービスの仕組み・精神面・金銭面のアドバイス、予防などについて、淑徳大学総合福祉学部教授の結城康博先生に教えていただきました。

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社会と積極的に交流を持ちましょう

自分自身が要介護にならないためには、アルバイト、ボランティア活動、趣味の集まりなど、どんなことでもいいので常に社会との接点を持ちましょう。社会参加している、他の人の役に立っているなどの意識は自分のモチベーションを高めると同時にほどよい緊張感から刺激を受けるからです。また、食事するときも、社会とのつながりが大切で、東京都健康長寿医療センターの調べでは、1人で食事するよりも、家族や友人など誰かいる状態で食事をした方が、会話・雰囲気から影響を受けて食が進み、認知症の予防が期待できるといいます。また、よく眠ることも大切です。

 

体を作る源である食生活に気を付けましょう

体を作る食生活は大切だと分かっているものの、加齢にともない身体活動量が低下し、食事の量が減少したり、内容が偏ったりしてしまいがちです。そのことにより十分な栄養分が摂れずに要介護状態になる可能性もあります。また、健康な体を維持するための栄養素が不足すると低栄養になり、認知症、免疫力・体力の低下、筋肉量の低下、骨量の減少などを起こしやすくなるので、注意が必要です。

そうならないためにも主食、主菜、副菜、牛乳・乳製品、果物をバランスよく摂りましょう。主食はご飯、パン、うどん、そばなどの「炭水化物」。主菜は肉、魚、卵、豆腐、納豆、豆類などの「たんぱく質」。副菜は野菜炒め、サラダ、おひたし、みそ汁などの「野菜系のおかず」(いも、きのこ、海藻類を含む)。さらに、食事の回数ですが、高齢になると次第に食が細くなり食べる量も減ってしまいがちです。そこで無理に決まった時間に3回摂らなくても、1日のうちに好きなときに食事を摂るよう心がけましょう。

 
介護のお世話にならないために日頃から適度に運動を

いつまでも元気で要介護にならないためには、老化を予防するための体力作りも大切です。介護が必要になる主な原因は、平成28年の厚生労働省国民生活基礎調査をみると、高齢による認知症、衰弱、骨折・転倒などの「老化現象」だということが分かります。

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身体の機能は、日頃から予防しておけば、維持・改善することが可能です。足腰が弱くなった、物忘れがひどくなったということを、年のせいにはせずに日頃から対策することで防げます。つまり、元気に暮らすには「介護予防」が大切なのです。特に、高齢になると、骨の密度が低くなって、骨折しやすくなります。特に閉経後の女性は、女性ホルモンの低下により「骨粗鬆(しょう)症」になりがちなこともあり、下のグラフのように、要介護の原因「転倒・骨折」の割合に関して女性の方が男性の2倍以上も高くなっています。

 

全国における大腿骨頸部骨折の年次別発生数 図2

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(折茂肇、橋本勉、坂田清美他、第3回大腿骨頸部骨折 全国頻度調査成績 1997年における新発生患者数の推定と10年間の推移 日本医事新報 1999より)


予防するためには、筋力トレーニング、ストレッチ、ウォーキングなどの運動を毎日適度に行い、機能の維持、向上をはかることが大切。また、玄関や廊下、トイレ、階段などに手すりを設置したり、扉を引き戸にする、段差のないバリアフリーを導入するなど住環境にも配慮し、転倒しないようにすることも重要です。

 

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取材・文/中沢文子

 

結城康博(ゆうき・やすひろ)先生

1969年生まれ。淑徳大学総合福祉学部教授(社会保障論、社会福祉学)、経済学修士、政治学博士。社会福祉士、ケアマネジャー、介護福祉士の有資格者。地方自治体に勤務、介護職、ケアマネジャー、地域包括支援センター職員として介護部署などの業務に従事。テレビ、新聞、雑誌など多岐にわたり活動中。新刊『突然はじまる! 親の介護でパニックになる前に読む本』(講談社)など著書多数。

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