成年後見制度はどのように利用されている? 具体例を見てみましょう

2025年には65歳以上の5人に1人は認知症になるといわれています。将来、判断能力が低下したとき、私たちの生活を守る方法の一つが「成年後見制度」です。成年後見制度の目的は、判断能力が衰えた人の財産管理や身上保護(生活や医療・介護の手続きを行うこと)です。地域後見推進プロジェクトを進める東京大学大学院教育学研究科教授の牧野篤先生にお話を伺いました。

 

pixta_37488867_S.jpg前の記事「判断能力が衰えてしまったら...暮らしやお金を守る「成年後見制度」(1)」はこちら。

  

本人の希望を反映するためには早めの準備が大切!

成年後見制度は判断能力が衰えてから後見人等(後見人・保佐人・補助人。以下同)を選任する「法定後見」と、判断能力があるうちに自ら任意後見人を選んで契約を結ぶ「任意後見」の二つがあります。法定後見制度では、家庭裁判所の審判により本人に最適だと判断した後見人等が選任されます。

「制度開始当初は親族が後見人等に選任されるケースが大半でしたが、昨今は親族よりも第三者が選任される割合の方が多くなっています。第三者とは主に弁護士、社会福祉士などの専門職。特に親族後見人による不正(横領など)が問題になっていることから、親族後見を希望しても資産が多い人は第三者が選任される傾向にあります」(牧野先生)

後見人等の選任には不服申し立てはできません。面識のなかった人に代理をされるのは心理的困難が伴います。また、法定後見は後見・保佐・補助がありますが、申し立ての多くが後見であることも問題だといいます。

「後見よりも保佐・補助の方が本人の意思が反映されやすい。また任意後見なら本人が代理人を事前に決めることができます。任意後見の利用者が法定後見制度が必要になった場合は、法定後見を利用することもできます。

裁判所への申し立ては親族が行うことが多いのですが、最近は身寄りがないご高齢者のため市区町村長による申し立てが増えています。制度を知り、判断能力が衰える前に利用を検討するなど早めに活用することが大切です」(牧野先生)

 

成年後見制度はこんな場合に役立ちます

【ケース1】老人ホームに入居したい(本人の状況...重度の認知症)
重度の認知症のAさんは介護してくれていた妻と死別し、特別養護老人ホームへの入居が必要に。身寄りがなく、本人による契約締結が難しいため、市長が後見開始の審判の申し立てをしました。社会福祉士が後見人に選任されて入居契約を行い、Aさんは特別養護老人ホームに入居できました。

 

【ケース2】お金の管理ができない(本人の状況...中程度の認知症)
Bさんは一人暮らし。買い物で支払い額が分からなくなるなど物忘れの症状が進行し日常生活に支障が出てきたため、長女と同居して自宅を売却することに。そこで長女が保佐開始の審判を裁判所に申し立てました。長女が保佐人に選任され、代理権(売却等の手続きを代行する権利)も認められたため、売却の手続きができました。

 

【ケース3】訪問販売で多額の契約をする(本人の状況...軽度の認知症)
Cさんは長男の留守中、訪問販売員から布団セットなど必要のない高額商品をたびたび購入。長男は補助開始の審判を申し立て、長男が補助人に選任されました。同意権(本人の購入等の意思に同意すること)も認められ、Cさんが長男に断りなく高額商品を購入した場合、長男が契約を取り消せるようになりました。

 

次の記事「「成年後見制度」のギモンを優しく解説。利用方法は? 後見人の不正を防ぐ方法は?(3)」はこちら。

取材・文/中沢文子

<教えてくれた人>
牧野 篤(まきの・あつし)先生

東京大学大学院教育学研究科教授。まちづくりや高齢化、過疎化問題を中心に自治体と連携して地域の生涯学習の共同調査を行う。現在、地域後見推進プロジェクトを進行中。『市民後見 入門』(誠信書房)など著書多数。

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この記事は『毎日が発見』2018年11月号に掲載の情報です。

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