2025年には65歳以上の5人に1人は認知症になるといわれています。将来、判断能力が低下したとき、私たちの生活を守る方法の一つが「成年後見制度」です。地域後見推進プロジェクトを進める東京大学大学院教育学研究科教授の牧野篤先生にお話を伺いました。
判断能力が衰えた人の財産管理や身上保護をします
成年後見制度の目的は、判断能力が衰えた人の財産管理や身上保護(生活や医療・介護の手続きを行うこと)です。
「判断能力が不十分になると、不動産・預貯金などの財産管理、介護サービスなど契約の締結、遺産分割の協議などを自ら行うことが難しくなります。また、悪徳商法の被害に遭う可能性も否めません。このような方々を保護・支援するのが成年後見制度です」と牧野先生。
例ば後見人(支援者)が認知症の人の代わりに必要な介護サービスの契約を結んだり、本人の預金から生活費等の支払いを行います。
昨年の後見等の申し立ての動機は1位「預貯金等の管理・解約」、2位「身上監護」、3位「介護保険契約」でした。また、後見開始の原因の約6割が認知症です。超高齢社会で制度の必要性がさらに高まると予想されます。
◆成年後見制度には法定・任意の二つがあります
法定後見制度
認知症や知的障害など判断能力が不十分な人に支援者が付き、生活・医療・介護・福祉などに関する契約や手続きなどの法律行為の代理等を行う制度。本人の判断能力により「後見」「保佐」「補助」の三つに分かれる。
任意後見制度
判断能力が衰えたときに備え、判断能力が問題ないうちに支援者(任意後見人)や支援内容を事前の契約で任意に決めておく制度。任意後見人は契約に基づき諸所の支払いや財産管理、介護サービスの契約など介護や生活面の手配を行う。
◆後見人になるのはこんな人です
後見人等を誰にお願いするか、申し立て時に希望を出すことはできるが、必ずしも希望通り選任されるわけではない。裁判所が調査・審理をし、専門職や法人など第三者が選任されることも多い。
【親族】
本人の資産が多い場合や親族内で争い事がある場合は選任されにくい。2000年の制度開始時は選任割合は91%と多かったが、17年には26%に減少。
【弁護士など専門職】
弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門的な知識を持つ専門職。資産が多い人には専門職が選任されることが多い。
【NPOなどの団体】
弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門的な知識を持つ専門職。資産が多い人には専門職が選任されることが多い。
◆専門職等の後見人等には報酬を払います
後見人等には本人の財産から基本報酬が支払われ、額は本人の資産により異なる。訴訟など業務内容により付加報酬が発生することも。
次の記事「成年後見制度はどのように利用されている?具体例を見てみましょう(2)」はこちら。
取材・文/中沢文子