慢性硬膜下血腫で記憶と金銭感覚を失った父。気付けば通帳残高が数万円に

慢性硬膜下血腫で記憶と金銭感覚を失った父。気付けば通帳残高が数万円に 10-pixta_25541970_S.jpg

ペンネーム:さくら
性別:女
年齢:36
プロフィール:小学1年と3年生の子育てに奮闘する主婦です。実家から遠方に嫁いだため、頻繁に帰省することができず、記憶を失った父の介護を母親ひとりに任せてしまっています。

私は現在、実家から新幹線で5時間以上かかる場所に嫁いでいます。3歳年上の兄もまた実家から新幹線で2時間ほど離れた場所で家庭を持っています。兄は両親に何かある前に自分の家の近くに引っ越してもらいたいと考えていたようですが、問題は突然おきました。

いまから3年前、67歳になった父が慢性硬膜下血腫になり、脳神経外科の病院で穿孔血腫洗浄術を受けました。発症した時は認知症に似た症状で、会話は支離滅裂。一般的には脳に溜まった血液を抜けばやがて正常に戻るものだそうですが、父の記憶はいまも戻らないままです。

医師によると、原因は3カ月くらい前に負った頭部の打撲。じわじわと父の脳内に血液が充満していたようです。無事に手術を終え、帰宅した両親でしたが、なかなか正常に戻らない父に、母も私も不安を覚えるようになりました。
私が実家に帰っていたある日、入院手術による保険請求に向けて証書を探していると、ATMのレシートが大量に出てきました。毎日毎日、普通ではない金額が引き出されているので調べてみると、なんと父の通帳は残高が数万円にまで減っていました。部屋を見渡してみると、同じような商品が山積みに。必要のないものをネットショップで大量に購入していたようです。とても几帳面だった父ですが、脳の損傷により、金銭感覚まで失なってしまっていたのです。それからは、記憶を失った父の代わりに、借金や支払いがないか調べる日々でした。ネットオークションなどもしていたようですが、IDやパスワードがわからないため、メールチェックすらできず苦労しました。母は父の介護のために仕事を辞め「勝手に運転されたら危険」と車も処分し、買い物は自転車を利用するようになりました。
母には、株や土地の売却に向けて成年後見制度の申請をすすめましたが、日々の生活でそこまで手がまわらないと言います。最初は「それでもやらなきゃ」とうるさく言っていましたが、毎日育児で疲れている自分自身も「手がまわらない」ことはたくさんあるな、と母の気持ちに寄り添うようになりました。

遠方から電話で様子を聞くしかない私でしたが、幸いなことに父の兄弟が心配して何かと訪ねてきて、困っていないか面倒を見てくれるようになりました。またご近所からも支援やアドバイスもあり、デイサービスなどを利用することで母もリフレッシュする時間ができたと聞いて、ほっとしました。

現在は、兄が両親を呼び寄せようと説得中です。当初は地元を離れたがらない母でしたが、次第に耳を傾けてくれているようです。嫁ぐ際は「両親に何かあったら」とあまり深く考えていませんでしたが、実際に問題が起こると遠方では対応できないと実感した一件でした。

健康法や医療制度、介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず事前に公的機関による最新の情報をご確認ください。
記事に使用している画像はイメージです。
 

この記事に関連する「みなさんの体験記」のキーワード

PAGE TOP