「年金が足りない!」都営住宅に住む高齢者たちの悲鳴/介護破産(1)

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介護のために資産を失う「介護破産」が最近話題となっています。実は介護破産の原因には、単に資産の多寡だけでなく、介護に関する「情報量」も大きく関わってくるのです。
本書「介護破産」で、介護で将来破綻するような悲劇を防ぐための方法を学んでいきましょう。

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年金が足りない高齢者たちの悲鳴

ある都営住宅の一室。一人暮らしの高齢者5人が集い、こたつを囲んでお茶をすすっていた。今日の天気からはじまり、孫のこと、病気のこと、話題は尽きない。ニュースで取り上げられている「年金」について一人が切り出した。 

「これ以上年金を減らされたら、私たちの生活はどうなっちゃうの?」
「テレビや新聞で年金の話題が取り上げられても、内容が難しくてさっぱりわからないよ」
ただ、一つだけ理解している点は、受け取る年金は将来にわたって減らされるということ。長生きすればするほど、生活が苦しくなる。笑い飛ばしていても、目つきは真剣だ。 

「消費税が上がってから、何を買っても高くつくので、食べ物や生活必需品以外は本当に買わなくなりましたね。洋服も以前は、お店の前を通ったら『あら、これいいわね』と、毎シーズン一つは新しいものを買っていましたが、新調しないでなるべく着まわししなくては。外出しても何も買わないでまっすぐ家に帰るようにしています」 

日本年金機構から毎年送られてくる「ハガキ」を片手に深いため息をつくのは、都営住宅に住むフサエさん(仮名、77歳)。定年退職後、年金をもらいながら趣味を謳歌する―そんな悠々自適な生活を思い浮かべながら、現役時代は必死に働き続けた。ところが、いざ年金を受け取ってみると、あまりの少なさにショックを受けた。

夫が15年前に他界してからは一人暮らし。嫁とついだ二人の娘たちが時折、フサエさんの様子をうかがいに訪ねてくる。定年まで企業の食堂などで働いたので、夫の扶養には入らず厚生年金に加入していた。現在、月に受け取る年金額は厚生年金と国民年金などを合わせて約13万円。「長年働いた割には少ない」というのが実感だった。女性は男性よりも賃金が低いため、支払う年金保険料が少ないからだ。

月々の生活で出費のウェートを占めるのは食費と光熱費、そして医療・介護費。フサエさんは糖尿病の持病があり、入退院を繰り返している。要介護度は7段階で一番軽い要支援1。週に2回、デイサービスに通う。3年前に転倒して足を骨折したときの後遺症でリハビリを行なうためだ。歩行が困難になりシルバーカーを押しながらやっとの思いで歩いている。このほかに、定期的に内科と整形外科に通う。医療費は薬代を含めて1割自己負担で月5000円程度。介護保険のサービス利用料も同様に1割負担で約5000円。

そして、ガスストーブをつけて暖を取る冬場の光熱費は1万4000円にもなる。

「年金生活に入ってからは家賃の減免申請をしたので1万1600円。光熱費、医療費、介護の費用が何かとかかるので、貯金を切り崩しながら生活しています。生活はいっぱい、いっぱいですよ。これから先、今まで以上に病院や介護のお金が必要になったらどうしようと不安になります」
「娘たち? 孫の教育費やら何やら、娘たちにも生活があるのでアテにできませんね。年金で生活できなくなったら生活保護に頼るしかないわね」
お茶をすすりながらフサエさんはため息混じりに語った。

次の記事「定年まで働いたのにもらえる年金が少ないという事実」はこちら。

結城 康博(ゆうき・やすひろ)
淑徳大学総合福祉学部教授。1969年生まれ。社会福祉士、介護福祉士、ケアマネジャー。地域包括支援センターおよび民間居宅介護支援事業所への勤務経験がある。おもな著書に『在宅介護――「自分で選ぶ」視点から 』(岩波新書)、『孤独死のリアル』(講談社現代新書)、『介護入門 親の老後にいくらかかるか? 』(ちくま新書)など。

村田くみ(むらた・くみ)
ジャーナリスト。1969年生まれ。会社員を経て1995年毎日新聞社入社。「サンデー毎日」編集部所属。2011年よりフリーに。2016年1月一般社団法人介護離職防止対策促進機構(KABS)のアドバイザーに就任。おもな著書に『書き込み式! 親の入院・介護・亡くなった時に備えておく情報ノート』(翔泳社)、『おひとりさま介護』(河出書房新社)など。

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『介護破産』
(結城 康博、村田 くみ/ KADOKAWA)

長寿は「悪夢」なのか!? 介護によって始まる老後貧困の衝撃!
介護のために資産を失う「介護破産」が最近話題となっています。本書では現在介護生活を送っている人々の生の声をルポしつつ、介護をするにあたり知っておきたいお金のこと、法律面のことなどに言及。介護で将来破綻するような悲劇を防ぐための方法論を記した一冊です。

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