ここで後期高齢者医療制度の保険料負担の仕組みについて改めて振り返っておきましょう。
保険料は都道府県によって異なるのですが、東京都を例にすると、保険料は年額で、4万6400円の均等割額と所得金額の9.49%の所得割額が課せられます。
つまり、いまでも年収の1割以上が保険料として徴収されているのです。
また、均等割には、低所得者のための軽減措置が定められていて、単身者の場合、例えば総所得金額が43万円以下であれば、7割減となります。
つまり、いまの制度でも、年収が上がると、保険料負担が上がっていく構造になっているのが、来年度以降は、さらに加速度的に保険料負担が上がる仕組みになるということです。
もちろん税負担も同じ構造になっています。
老後に稼げば稼ぐほど、負担が急速に大きくなるのです。
公共料金は地域によって差が大きい
こうした現実を考えれば、老後に不足する資金を働くことで穴埋めするというライフスタイルは、とても不利だということが分かります。
年金を繰り下げ受給して、より高い年金をもらうことも、同じ問題に直面します。
老後は、収入を増やすよりも、年金の範囲内で暮らせるように家計をリストラする方が、負担の面でも、圧倒的に有利になるのです。
もちろん家計をリストラするのは、簡単な話ではありません。
ただ、都心に住まわれている方は、コストの低い地域に移住すれば、さほど苦労せずとも節約が可能になります。
物価が安くなり、住宅費も安くなり、家庭菜園などで自給を始めることができるからです。
ただし、どこに移住するかは、慎重に検討することが必要です。
例えば、今回取り上げた後期高齢者医療保険料は、都道府県ごとに異なります。
所得割率は全国平均で9.34%ですが、最も高い大阪府は11.12%、最も低い岩手県は7.36%と3.76ポイントも違うのです。
大都市ほど高いということではなく、むしろ西高東低の傾向があります。
原因はよく分からないのですが、西ほど医療機関にかかる人が多いことが原因のようです。
ただ、地域によって負担が異なるのは、医療保険料だけではありません。
例えば、水道料金は市町村ごとに、もっと大きな差があります。
最も安い兵庫県赤穂市と最も高い北海道夕張市の間には7倍もの格差があります。
さらに電気代も地域によって大きな差があります。
400キロワット時を使用したときの電気料金で最も高い沖縄電力は、最も安い北陸電力より22%も高くなっています。
ただ、これは構造的な差というより、現状の原油・天然ガス価格の高騰という状況の下での数字なので、将来エネルギー価格が下落すれば、格差は小さくなっていきます。
こうしたいくつもの要因を考えると、どこに移住したら負担が一番小さくなるかは、簡単には言えません。
ただ、自分がそこに住みたいという場所の候補があったら、まずそこで暮らすことのコストを丁寧に調べておくことが必要になるでしょう。
もちろん単純にコストを考えるだけでなく、どれだけの医療機関があるのか、買い物ができる場所はどこにあるのかなど、生活の利便性のチェックも重要になります。
さらに重要なのは、自分が何をして老後を過ごしたいのかということです。
私の場合は、大学での講義と農業と博物館とラジオというのがいまの仕事の4本柱です。
それを考えると、いま住んでいるトカイナカがベストというのが、正直なところなのです。