住宅ローンを退職後も払い続ける設定は無謀? 「老後破産」を避けるための適正なローン設定とは

『楽しく賢くムダ知らず 「ひとり老後」のお金の知恵袋』 (保坂 隆/明日香出版社)第4回【全7回】

「老後」について、不安なことを耳にする機会が多い昨今。老後とは本当に怖いものでしょうか? 保坂サイコオンコロジー・クリニック院長の保坂隆氏は、著書『楽しく賢くムダ知らず 「ひとり老後」のお金の知恵袋』のなかで、「老後ほど好きに人生を楽しめる時期はない」と言います。ただし、それには手元のお金をやりくりする力が必要です。具体的には、どのような点に気を付ければよいのか。やりくりのコツを見ていきましょう。

※本記事は保坂 隆著の書籍『楽しく賢くムダ知らず 「ひとり老後」のお金の知恵袋』(明日香出版社)から一部抜粋・編集しました。


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※写真はイメージです(画像提供:ピクスタ)

定年後は住宅ローンを支払い続けない

国土交通省の「令和3年度 住宅市場動向調査報告書」によると、分譲マンションの平均取得年齢は44.3歳、分譲戸建て住宅の場合は38.4歳となっています。

わかりやすいように、この2つの平均年齢のほぼ中間である42歳で住宅を取得したとして、話を進めさせてもらいます。

月々の返済額が最も少なくて済む35年ローンを組むと、完済年齢は77歳になります。

2021年に改正された高年齢者雇用安定法によって、70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務になりましたが、ローンの完済年齢がその7年後というのは無謀な設定と言わざるを得ません。

なぜ、こうした設定をする人が多いかというと、「退職金で住宅ローンを完済する」という腹づもりがあるからでしょう。

しかし、その退職金は減り続けているようです。

そもそも民間企業の退職金の額は、法律で定められているものではありません。経営者の一存や会社の経営状態で増減できるものです。経営が絶好調だったバブル時代と比べると、現在はほとんどの企業で大幅に減っています。

ちなみに厚生労働省の「就労条件総合調査」(令和4年)によると、大卒・大学院卒者が受け取った定年退職金額は、2007年には平均2491万円でしたが、2022年には平均2037万円に激減。つまり、15年間で400万円以上も減ってしまったのです。

その結果、予想していたほど退職金を受け取れず、住宅ローンが払いきれなくなったというケースが増えています。「下流老人」や「老後破産」が増えている原因の多くも、ここにあるといわれています。

 

保坂 隆
1952年山梨県生まれ。保坂サイコオンコロジー・クリニック院長。慶應義塾大学医学部卒業後、同大学精神神経科入局。1990年より2年間、米国カリフォルニア大学へ留学。東海大学医学部教授(精神医学)、聖路加国際病院リエゾンセンター長・精神腫瘍科部長、聖路加国際大学臨床教授を経て、現職。また実際に仏門に入るなど仏教に造詣が深い。著書に『精神科医が教える 心が軽くなる「老後の整理術」』『精神科医が教える お金をかけない「老後の楽しみ方」』(以上、PHP研究所)、『人間、60歳からが一番おもしろい !』『ちょこっとズボラな老後のすすめ』『繊細な人の仕事・人間関係がうまくいく方法』(以上、三笠書房)など

※本記事は保坂 隆著の書籍『楽しく賢くムダ知らず 「ひとり老後」のお金の知恵袋』(明日香出版社)から一部抜粋・編集しました。

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