人生100年といわれる時代。50歳という年齢は「人生の折り返し地点」でもあります。わたしたちはゴールに向けて、どのように走っていくべきなのでしょう?「50歳は人生最大の転機であり、チャンスでもある」という実業家・本田直之さんの「自分をリセットし、変化と実験を繰り返しながら走り抜ける」エッセンスをお届けします。
※この記事は『50歳からのゼロ・リセット』(本田直之/青春出版社)からの抜粋です。
50歳からは教える、のではなく、教わる
わたしは大学で講義をすることもあって、定期的に若い人たちとつながっています。学生たちとの付き合いはいつも刺激になり、気持ちをリフレッシュさせてくれます。彼らと話していて感じるのは、本当に興味の幅が広く、優秀な人が多いということ。
同世代のおじさんたちが読むメディアは、「今の若い子たちは草食系だ」「物を買わない」と批判します。しかし、実際に話してみると、むしろメディア側のほうがわかっていないなと思います。若い子たちの生きている時代は、今の50代の若い頃とは違います。
同じような物欲がないのは当たり前で、車が必要なときはカーシェアを利用し、ブランド物よりも自分の納得する逸品を探すことのほうに情熱を傾ける。あるいは、同じ額のお金を使うなら物よりも新しい体験を選ぶ。
彼らのほうがおじさん世代よりも本質的な方向を見ているし、価値観を進化させていると感じています。
ところが、コミュニティを飛び越えて若い人とコミュニケーションを取るとき、50代は人生経験でマウントしようとしがちです。
アドバイスと称して「俺の話を聞け」と今では通用しないような経験談を話し始める。時代の変化が想像できずに、「僕が君くらいの頃は......」と上から目線で語りかける。それで、食事代や飲み代をおごって「若者と交流した」と思っているようでは、ヨコの人間関係は広がりません。
そんなスタンスでいると、若い人たちは潮が引くように離れていきます。彼らも暇ではありませんから、興味もない経験談、上からのマウントに付き合う義理はないからです。自分に置き換えて、70代になった会社の元上司や先輩から「飲みに行こうよ」と誘われたら、どうでしょう?
行きたいなと思えるのは、話を聞きたくなるような興味深い情報をくれる人だったり、自分では選ばないようなおもしろい店に連れて行ってくれる人だったり、何らかの気づきを与えてくれる先輩からの誘いのはずです。
教えるのではなく、教わる。語るのではなく、聞く。あなたが若い人と付き合うときも、聞き手に回ること。そして、提供できるバリューはどんどん与えていくことを心がけるべきでしょう。
50歳を超えたら、新入社員になったくらいの気持ちで、ゼロから学び直す意識を持つことです。若い人の聞き役になることは、明日から心がければすぐにできます。中間管理職として、上からの指示やノルマを優先するのが当たり前だと思っていたのなら、一呼吸おいて若手の声を聞いてみましょう。
教えてもらう気持ちを持って、聞いてみよう、吸収しよう、学んでいこうというスタンスで話を聞く。言いたいことがあっても、まずはぐっと我慢して、余計なことを言って話を遮らない。
その意識を持つだけで、コミュニケーションの質がみるみる変わっていきます。
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