せっかく迎える「第二の人生」、イライラ・クヨクヨしていてはもったいない! 見えない将来に不安ばかり抱き、ひたすら悩みを膨らませているシニア世代のために、より楽にすがすがしく生きていくための心の持ち方を伝授します。
※この記事は『精神科医が断言する「老後の不安」の9割は無駄』(保坂隆/KADOKAWA)からの抜粋です。
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達成感を得るためのちょっとしたコツ
あれこれと思いをめぐらせ、定年後の夢が見つかったら、今度は目標を立てましょう。
勤めている間は、目標達成までの道のりは会社で設定され、社員はスケジュールにのっとって目標を達成すればよかった。
ところが、定年後は自分で目標を定め、スケジュール管理も自分でしなければ、誰もコントロールしてくれません。実は、そこが大事なところで、定年後は自発的に動かないかぎり、空しく時間が過ぎ去っていくだけということにもなりかねないのです。
ただ、目標を持とうと思っても、いきなり半年後にフルマラソンに挑戦するというような高いハードルを設定すると、無理があり過ぎて挫折してしまいます。
同じマラソンで目標を定めるにしても、2年後のフルマラソンをめざして、3か月後には10キロを走り、1年後にはハーフマラソン完走をめざすといったペースにすれば、達成の可能性も十分あるでしょう。
そうすれば、目標をクリアするという成功体験によって自信が生まれ、その達成感がまた次の意欲を呼び起こすという、好循環につながっていきます。
そこまで大げさなものでなくても、「おいしいパスタをつくりたい」と思ったら、輸入食品の多い店に足を伸ばして食材を買い込んだり、ついでにワインを見てまわったり、書店でレシピ本を探したり、少しずつ興味の幅を広げることができるでしょう。
とくに何も思いつかないなら、とりあえず「ハーレーダビッドソンに乗ってみたい」「温泉の効能を調べてみたい」「キノコ狩りに行きたい」「ウクレレを弾きたい」など、やりたいことをなんでも紙に書き出し、実現可能なものからアプローチしてみましょう。
キノコ狩りに行くなら、まず書店でキノコ図鑑を買って、どのルートでどの山に行くのかを決め、山歩き用の服と靴を身につけて出かけようなどと、1日の計画を立てます。こうしてやりたいことが増えるたびに新しい目標ができれば、それが暮らしの充実感につながるのです。
さらに、目標達成まで長いスタンスで飽きずに取り組めるものがあれば、自分自身の成長にも役立ちます。とくに、書道や写経、絵画や陶芸など、習得までに時間のかかるものや、合気道やヨガ、太極拳や筋トレなど、毎日の積み重ねによって上達していくものは、その達成感も格別です。
3年前にリタイアしてから「もう一度自分を鍛え直してみよう」と決意したKさんが始めたのは、「真向法(まっこうほう)」という簡単な動きの健康体操でした。Kさんは、かつて東京都知事を務めて99歳で亡くなった鈴木俊一氏が、80歳を過ぎても楽々と180度の開脚をしていたのはこの体操のおかげだと聞いたのです。そして、ぜひチャレンジしてみようと思ったのだとか。
ところが、初めて挑戦したKさんは、開脚どころか前屈もできない自分にびっくり。そのみっともなさに、「なんとしても180度の開脚ができるまで頑張ろうと、かえってやる気が出ました」と、持ち前の負けん気を発揮して、毎日休まず、ひたすらトレーニングに励みました。
そして、1年の月日が流れた頃、両足は160度、開くようになっていました。
「1日1ミリ」をモットーに頑張ってきた彼女は、成功体験を重ねるとともにぐんぐん実力をつけて、やがて目標だった180度の開脚ができる頃には、体操を指導するサブコーチに就任。「60歳になってからここまでやるのは無理だと皆が思っていたでしょうが、やればできるということを見せられてよかった」と笑顔で話しました。
「継続は力なり」を身をもって示してくれたKさんにならって、私たちも「1日1ミリ」を真似たいものです。
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