フランス人に学ぶ「高齢者のオシャレ」7つのポイント

歳を重ねるとともに増えていく、病気、孤独、お金などの不安...。世界共通の悩みと思いきや、「フランス人」は老いることを「人生の収穫期」と考えて、楽しく過ごしているそうです。外交官から仏修道会の介護ボランティアに転身した賀来弓月さんの著書『60歳からを楽しむ生き方 フランス人は老いを楽しむ』(文響社)から、フランス流の「人生を前向きにとらえる10のヒント」を連載形式でお届けします。

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ちょっとしたおしゃれをお金をかけずに楽しむ

一般的に、フランスの人々には、いつまでもおしゃれで、美しくありたいという強い思いを持っています。 そのせいか、男女とも、見た目が老けることへの不安感が強いように見受けられます。日本では、アンチエイジングを考えているのは、主に女性です。この点では日本の男性は「反応が鈍く」、だらしない格好を平気でしている人も少なくありません。

フランスでは、男女ともに、加齢による自分の容姿の変化にもっと敏感に反応しているように思います。

「老いほど女性に鏡を見ることを憎ませるものはない」(Rien ne peut faire plus hairson mirroir que la vieillesse)といったのは、フランソワ・サルバ・モンフォール(1653~1722イエズス会神父、劇作家)です。フランスでも誰もが顔の皺は気にしています。しかし、高齢期には「顔の皺」よりも「心の皺」にもっと気をつける必要があります。フランスには「老いは顔よりも心にもっと皺を作る」(Lavieillesse nous attache plus de rides en l'esprit qu' au visage)(ミシェル・ドゥ・モンテギュ―1533~1592仏哲学者)という名言があります。

フランス人は、年齢相応の見た目を大事にしようとします。例えば、「白髪は老いの花である」(Les cheveux gris sont les fleurs de la vieillesse)という諺がある通り、フランス人は白髪を気にする必要はないと考えています。むしろ、白髪は高齢者に品位を与えると、多くのフランス人は考えています。

フランスには、「年甲斐もなく」などと高齢者たちのおしゃれを揶揄するような雰囲気はありません。高齢になったからといって、自分の容姿に無頓着になる人もあまりいません。おしゃれが高齢者たちの生きる喜びと生きる士気を高めることがよく理解されているのです。

おしゃれに対する気配りは、老人ホームで暮らす人たちについても同じです。老人ホームの高齢者たちが、寝間着やスリッパで老人ホームの公共空間に姿を見せることはありません。食堂では、男女ともに正装に近い格好で食事を楽しんでいます。

修道女たちも高齢者たちの相応のおしゃれを褒めることを忘れません。私が働いていた貧困高齢者を対象にする修道会の老人ホームには、服飾会社などから寄付される多くの新品の衣服の在庫がありました。修道女たちは、高齢者たちの幸せのために、これを機会あるごとに分け与えていました。また、老人ホームには、女性用美容室、男性用理容室、エステルームがあり、高齢者たちのおしゃれ心を満たす工夫がなされているのです。

こうした容姿へのこだわりは、年をとっても、性愛の喜びを感じたいと思うフランスの高齢者たちの気持ちと無関係ではありません。

他方、日本の事情はすこし違うようです。「見た目を気にしている」ことを他人に知られることを警戒したり老いた自分の容姿を卑下したりして、「高齢者にはおしゃれは無用」と決めつけている人も少なくありません。日本の老人ホームには、1日中パジャマ姿で過ごしている高齢者もいます。しかし、容姿の衰えていく高齢期こそおしゃれをすることで、生きる喜びと生きる士気を得られるはずです。

吉田茂元首相(外交官出身で戦前に駐英大使だった)は、若い外交官に向かって「君たちは、借金をしてでも、みっともない格好だけはするな。一流のものを着て、一流の人に見えるようにしなさい」とよくいっていました。当時は服装の面でも、欧米の人間にはひけをとりたくないと考える日本人もいましたから、そんな日本人の気持ちを反映した言葉だったのかもしれません。

おしゃれをすると、たしかに自分の姿の変化に心が躍るのを感じるでしょう。自分の生活に「メリハリ」も出てきます。良い気分転換にもなります。

では、高齢者にとって望ましいおしゃれはどういったものでしょうか?

フランスの老人ホームで出会ったおしゃれ感覚の優れた老紳士のボランティア、レクレルク氏に、「高齢者のおしゃれのポイントは?」と尋ねると、笑いながら「この私をよく見てください」という。たしかに、レクレルク氏の毎日の出で立ちには非常に学ぶところが多かったように思います。同氏の語るフランス人高齢者のおしゃれのポイントを次のとおりです。

(1)年齢相応のやや保守的な格好を目指す

華美な服装は「調子外れ」とうつることがあります。明るい色彩のものを着用するのは素敵だが、誰にも似合うというわけではありません。そのリスクを考えて高齢者にはやや保守的な装いが安全でしょう。

(2)季節に合った素材を選ぶ

たくさんの洋服を持つ必要はありません。ただし、四季を快適に過ごすために生地の素材や色を選ぶとよいという。服装は見た目を良くするだけのものではありません。気候の変化から、体を守るために、一日に何度着替えてもよいでしょう。また、平衡感覚の衰えている高齢者は転倒に気をつけなければなりませんから、体の自由な動きを妨げない素材や仕立を選ぶのが好ましいです。

(3)統一感を出す

色彩や洋服のトーンを揃えることは重要です。フランスのおしゃれの人の間には、「ややフォーマルな服装」(例えば背広)にあえてスニーカーをはく人もいますが、そのような伝統的な装いと統一感を敢えて無視する「遊び心」のあるおしゃれは誰にも似合うというものではありません。統一感という場合、ズボンとシャツと上着だけでなく、帽子、靴、靴下をひっくるめたトータルで考えることが望ましいです。

(4)帽子をうまく使う

高齢者には帽子がよく似合います。フランス人は、よくおしゃれに帽子に使います。女性の場合には、防寒用の毛皮の帽子以外は、室内で帽子をかぶることが許されています。しかし、男性の場合は、室内では帽子を脱ぐのが伝統的な礼儀。こうした伝統的なマナーを心得た上で、帽子を使ったおしゃれを奨めたいです。

(5)靴はこまめに磨く

どんなに着飾っても靴が汚れていては興ざめです。靴はこまめに磨く。靴の汚れは非常に目立つものなのです。

(6)清潔感を意識する

おしゃれを語る以前の問題ですが、汚れたもの、シミのついたもの、破れたものを着ているのは、老いの醜さを一層引き立てます。だらしない格好は「老醜」の最たるもの。質素でも、清潔感のある装いが大切。

(7)背筋を伸ばす

背筋をピンと伸ばすように常に心掛ける。男女共通の美しさの最低要件といえます。

おしゃれにあまりお金を費やすことができない高齢者も以上の7つの要件を満たせば優雅な装いは十分に可能だとレクレルク氏は言っていました。

『老いは顔よりも心にもっと皺を作る』
La vieillesse nous attache plus de rides en l'esprit qu' au visage.

フランス人に学べば老後は楽しくなる!『60歳からを楽しむ生き方』記事リストはこちら!

051-syoei-france.jpg「美しさとは何か」「オシャレの楽しみ方」「孤独の捉え方」など10の項目から、老いを楽しむフランス人の人生観が分かります

 

賀来弓月(かく・ゆづき)

1939年、愛知県生まれ。1960年外交官上級試験合格、61年名古屋大学法学部卒、外務省入省、英オックスフォード大学大学院留学(外務省在外上級研修員)。外務省退職後、清泉女子大学非常勤講師、NPO法人アジア近代化研究所特別顧問。主な著書に『内なるものと外なるものをー多文化時代の日本社会』(日本経済評論社)など。

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『60歳からを楽しむ生き方 フランス人は老いを楽しむ』

(賀来弓月/文響社)

年齢を重ねると孤独感や焦燥感、死への恐怖心にさいなまれる…。そんな不安を、フランス人が考える「老いの愛し方」で払拭してくれる一冊。フランスの高齢者がオシャレや食事をどう楽しんでいるのか、その生き方を見習えば、老いも光輝く人生の一部になるはず。

※この記事は『60歳からを楽しむ生き方 フランス人は老いを楽しむ』(賀来弓月/文響社)からの抜粋です。
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