老後資金のために「投資」を考えているけど、ちょっと怖い...そんな人にまず知ってほしいのが「金融のイロハ」です。そこで、資産運用のプロ・山崎元さんに、金融知識が全くない大橋弘祐さんが質問する形式で分かりやすいと好評の著書『難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!』(文響社)から、投資の初心者が知っておきたい「投資と貯蓄の疑問」をお届けします。
普通預金だって安全とは限らない
――(老後の資金に)僕は年金に月プラス10万円くらいは欲しいですかね。そうすると(ためるべき金額は)3600万ですか
※老後資金の設定金額を決める前回の記事はこちら「360万円あれば毎月+1万円!? 目からウロコの老後資金の考え方」
そしたら、個人向け国債以外のやつ買ったほうがいいね
――でも、他のやつは減っちゃうんですよね
減るというか、減る可能性がある
――減るのか......
でも、君が預けてる銀行預金にだってリスクはある
――え、銀行預金にリスクがあるってどういうことですか?
一人一行1000万円までと預金の保護の対象が決まってるから、もし、銀行に1000万円以上預けていて、その銀行がつぶれたら、1000万以上はどうなるかわからない。それに、『国』と『銀行』どっちのほうが危険かっていったら銀行だしね
――でも、先生、僕は1000万円以上もないので大丈夫です......
だとしても、『円』の価値自体が下がるリスクがある。例えば1万円が20年後に、今の価値で測ると5000円くらいになってるかもしれない
――どういうことですか?
さっき、国が借金を返せなくなったらお金をたくさん刷るって話をしたでしょう。あと、政府がお金を刷ってインフレに向かわせるっていう政策をとると(実際に日本政府はその政策を進めている)、お金が増えた分、お金の価値が下がる
――それってもしかしてこれですね。第一次世界大戦で負けたドイツは、フランスやイギリスに莫大な請求をされて、お金が払えなくなったから、お金をたくさん刷って、ハイパーインフレになったんですよね。それでパンの値段が1兆マルクとかして、ドイツ国内が大混乱したんですよね
うん、まあ、それ......。ドイツのハイパーインフレは極端だけど、それと一緒でお金の価値が下がると100円が100円なんだけど100円じゃなくなってしまう。仮に、2倍に物価が上がるとすると、100円で買えていたジュースが200円になるから、今は100円でジュース買えたのに、その未来ではジュースが買えなくなるってこと(図9)
――やばいじゃないですか......
まあでも、インフレは持っているお金の価値が下がることで、インフレになると給料も上がるのが普通だから、君みたいにこれから稼ぐ人は相対的に有利だよね。心配するのはお金持ちだけでいいんだよ
――.........
それに、インフレになるかもしれないけど、ならないかもしれない。だから大切なことは、国債にしろ、普通預金にしろ、今持っている500万が将来も500万のままだとは考えないほうがいいってこと。手堅く見える定期預金だって、実質的な価値は変化すると考えないといけない
――じゃあ、外貨預金ですか......
ちなみに言っておくと、外貨預金は絶対やらないほうがいい。預金っていう名前がつくから、安全だと思ってはじめる人がいるんだけど、完全に銀行のカモだから
――カモですか......
うん。確実にカモ
[まとめ]
・インフレになるとお金の価値が下がる。
・銀行預金や日本国債は元本保証だけど、インフレが起きると実質的に価値が減る。
・同じ金額でも、時間がたつと実質的な価値は変化すると覚える。
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