老後資金のために「投資」を考えているけど、ちょっと怖い...そんな人にまず知ってほしいのが「金融のイロハ」です。そこで、資産運用のプロ・山崎元さんに、金融知識が全くない大橋弘祐さんが質問する形式で分かりやすいと好評の著書『難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!』(文響社)から、投資の初心者が知っておきたい「投資と貯蓄の疑問」をお届けします。
老後はいくら必要?
――国債の金利は約0・3%ですよね。もし、そんな低い金利が続いたら僕の老後は少しさびしいですよね
そうだね。さっき教えた72の法則にあてはめると、500万を2倍の1000万にするだけでも、72÷0・3で240年かかる
前回の「人類最大の発明!? お金を増やしたいなら知っておきたい『72の法則』」はこちら
――240年も生きられませんよ......
知ってる
――はあ......、老後が心配になってきました
君さ、老後が心配っていうけど、老後のためにいくら必要だと思ってんの?
――1億円くらいですか
は?どうしてそんなにいるの
――だって銀行の人が言ってたんですよ。老後を今のままの経済レベルで保つならそれくらい必要だって
さっきも言ったように、銀行の人が、そうやって不安を煽るときは、何か売りつけようとしてるとき。1億円が必要って言われたら、何か始めなきゃと思うでしょう。でも、果たして本当に必要か、考えてみなよ
――でも85歳まで生きたとしたら、65歳で定年退職したとしても、1億円を20年間で使うことになるじゃないですか。そうすると1年にならすと500万だから、そんな多い額だとは思わないんですけど......
それって全てを貯金でまかなおうとした場合でしょう。国から年金だってもらえるんだよ
――え?年金なんて本当にもらえるんですか
もらえるよ。もちろん今支給されている額に比べたら、減ることももらえる時期が遅れることも覚悟しなきゃいけない。でも、戦争でもして占領されない限り、まったくなくなることはない
――でも、年金だけじゃ最低限生活できるレベルなんですよね
そうかもしれない。でも、プラスの要素もある
――何ですか、プラスの要素って
まず、歳をとると今よりも活動的じゃなくなる。だから、衣食住にかかる費用や交際費は少なくなる。つまり、今のままの生活レベルを本当に保つ必要があるか考えてみるべきだね
――まあ、確かに30過ぎると、食欲がなくなって焼肉よりも豆腐とか食べるようになりましたし、いろんなことに興味がなくなって出費が減った気がします......
30代でそれは早い気もするけど......。あとは技術の進歩や企業の努力で生活はどんどん便利になるからね。服でも、パソコンでも身の回りのものを見てみなよ。安くていいものが溢れかえっているでしょう。これからもっと進歩するはずだから、同じ程度の豊かさをキープするだけなら、より少ない金額で実現できる世界になっている
――じゃあ、いくらあればいいんですかね
『老後にいくら必要か』は、こう考えるのがいいと思う。多めにみて老後を30年生きるとする。もし360万円を貯めておけば、年金でできる最低限の生活に、ひと月あたりプラス1万円の生活。720万円を貯めておけば、月プラス2万円の生活。そう考えればわかりやすいんじゃない
――360万円で月プラス1万ですか......。たしかにわかりやすいですね
[まとめ]
・今よりは減ると思われるが、最低限の生活をしていくくらいの年金はおそらく支給される。
・老後にいくら必要か考えるときには、360万円があれば、必要最低限の生活に毎月プラス1万円(30年間分)と考える。
・老後を迎えるころには、生活水準が向上しているし、消費する欲求も減っているので、その分かかるお金も減る。
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5章にわたって国債や投資信託、NISAに年金に至るまで、資産運用の基本のキを解説。実際にネット証券の口座開設法も写真で紹介されて分かりやすい