納豆にオクラ、モロヘイヤ...。認知症予防に「ネバネバ食品」のススメ

「親が認知症になってほしくない...」介護のことも考えて、そう思う人も多いでしょう。東京医科歯科大学名誉教授の藤田紘一郎先生は「認知症は予防できる病気で、何もしないのはもったいない」と言います。そこで藤田先生の著書『親をボケさせないために、今できる方法』(扶桑社)より、食事と生活の中での「認知症の予防策」についてご紹介します。

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高齢の親ほど、"ネバネバ食品"をたくさん食べてもらう

なぜ、腸のなかでヤセ菌が増えると、認知症になりにくくなるのでしょうか。

この因果関係は、まだわかっていません。

ただ、身体の炎症と関係があるだろうと考えられます。

ヤセ菌が増えると、短鎖脂肪酸という物質の生成量が増えます。

この短鎖脂肪酸には、強力な抗炎症作用があります。

短鎖脂肪酸は、大腸ではエネルギー源とされ、腸管が活発に働くためにたくさん使われます。

ヤセ菌たちが腸で使い切れないほど多くの短鎖脂肪酸を産生するようになると、血液に吸収されて、体中をめぐります。

こうなると、短鎖脂肪酸が体内の炎症を抑えるように働きます。

脳で働けば、脳内の炎症がやわらぎます。

これが、ヤセ菌が増えると認知症の予防になると考えられる理由です。

また、短鎖脂肪酸が増えると、免疫細胞の暴走がおさまることがわかっています。

脳の炎症は、ミクログリアという免疫細胞の暴走が原因していることは第1章でお話ししました。

反対に、デブ菌が多くて太っている人の体内では、活性酸素が発生しやすくなっています。

飢餓に耐え抜いて命をつないできた人間の身体にとって、肥満は正常なことではなく、異常なこと。

そのため、肥満という異常な状態を身体が強いられると、体内では活性酸素が大量に発生してしまうのです。

肥満も認知症のリスクファクターになることは第1章でお話ししたとおりです。

さらに、ヤセ菌は活性酸素を消去してくれます。

デブ菌が活性酸素を発生させてしまうのとは反対に、ヤセ菌には水素をつくる働きがあります。

水素は酸素と結びつくと水になりますが、水素は活性酸素とも結びつきやすく、無害化してくれるのです。

水素と認知症の関係を示す研究があります。

東邦大学の石神昭(いしがみあきひと)博士と東京都老人総合研究所などの研究では、水素水がマウスの脳に蓄積していた活性酸素の量を減らすことが明らかにされました。

水素水を与えたグループは、ふつうの水を与えたグループに比べて、活性酸素の量が平均して27パーセントも少なかったのです。

また、日本医科大学の太田成男(おおたしげお)教授らの研究では、ストレスを加えたマウスに水素水を与えたところ、マウスの記憶力の低下が半減したことがわかりました。

水素水を飲ませることによって、記憶力をつかさどる脳の海馬の変性細胞が減っていたことが観察されたのです。

では、親に水素水を飲ませておけば、認知症を発症させずにすむのでしょうか。

そう簡単にはいかないようです。

ペットボトルなどの容器に入れて販売されている水素水は、開栓すると水素が抜けやすいのです。

また、保存期間が長くなると、水素量がだんだん減ってしまいます。

ですから、市販の水素水は、購入後はなるべく早く飲み、開栓したらいっきに飲み切る必要があります。

しかし、そんな苦労をしなくても、腸内のヤセ菌を増やすことができれば、人は自分の腸のなかで水素をつくることができるのです。

それが脳に活性酸素がたまるのを防ぎ、認知症の予防に役立ってくれるのです。

そのために、ヤセ菌の大好物である高食物繊維・低糖質・低脂質の食事を親に心がけてもらう必要があるのです。

脳のなかで慢性炎症が起こると、認知と運動の能力の低下を招く化学物質がつくられることがわかっています。

ですから認知症の予防には、慢性炎症を防がなければいけませんが、加齢も炎症を起こす一因となるのです。

歳をとることは生きている限り止められません。

ですから、慢性炎症もゼロにはできないのです。

ただし、炎症が起こるスピードをできる限りゆるやかにする方法があります。

それを裏づける研究が米国のイリノイ大学で行われました。

その方法とは、食物繊維を十分にとることでした。

善玉菌やヤセ菌が食物繊維を消化するときに、短鎖脂肪酸がつくられることはお話ししました。

脳内の炎症をやわらげるには、この短鎖脂肪酸の抗炎症作用が重要です。

とくに、免疫細胞であるミクログリアに対しては、短鎖脂肪酸のうちの酪酸が抗炎症作用を発揮していることがわかりました。

なお、このイリノイ大学のF・A・ウッズ教授とR・W・ジョンソン教授の実験で注目されたのは、次の事実です。

老年マウスと若年マウスにそれぞれ食物繊維の少ないエサと多いエサを与え、血液中の酪酸をはじめとする短鎖脂肪酸の濃度や脳の炎症性物質を測定しました。

結果、食物繊維の多いエサを与えたマウスは、老年・若年ともに酪酸をはじめとする短鎖脂肪酸のレベルが上がりました。

一方、食物繊維の少ないエサを与えたマウスは、老年グループだけが腸に炎症を起こしたのです。

食物繊維の少なさは、年老いたマウスほど腸に炎症を起こしやすく、深刻だということです。

これは人も同じです。

高齢になったら、若いころ以上に意識して食物繊維を多くとるよう努力しなければいけません。

とくに水溶性の食物繊維は、善玉菌やヤセ菌のよいエサになり、短鎖脂肪酸の産生量を増やします。

水溶性の食物繊維は、海藻類やイモ類、豆類、果物に豊富です。

とくに納豆やオクラ、モロヘイヤ、ヤマイモ、メカブなどネバネバ食品に多くなります。

おすすめは、3つのネバネバ食品を醤油であえただけの簡単料理「ネバネバ3兄弟」。

親には「毎日ネバネバ3兄弟」を食べてもらいましょう。

【まとめ読み】『親をボケさせないために、今できる方法』記事リスト

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高齢の親の認知症を予防する「具体的な59の方法」が、4章にわたって解説されています

 

藤田紘一郎(ふじた・こういちろう)
1939年、旧満州生まれ。東京医科歯科大学名誉教授。2000年、ヒトATLウイルス伝染経路などの研究で日本文化振興会・社会文化功労賞、国際文化栄誉賞を受賞。『笑うカイチュウ』(講談社)、『腸をダメにする習慣、鍛える習慣』(ワニブックス)、『デブ菌撃退! つくりおきレシピ』(扶桑社)など著書多数。

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『親をボケさせないために、今できる方法』

(藤田紘一郎/扶桑社)

「70歳を過ぎたら、食生活は変える!」自身も80歳を超えて不調に見舞われた著者が、自身の経験と医学的見地から「朝食を抜く」「週2回、肉を食べる」などをわかりやすく解説。子供の目線から「親への伝え方」まで配慮された、アラフィフ女性にぜひ読んでもらいたい一冊です。

※この記事は『親をボケさせないために、今できる方法』(藤田紘一郎/扶桑社)からの抜粋です。

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