瀬戸内寂聴108の言葉「許せないなんて言えなくなります」/愛に始まり、愛に終わる

生きるとはどういうことか、孤独とは、愛とは何か――。誰かを愛するがゆえに、心に生じてしまう苦悩。そんな迷いや苦しみを和らげてくれる「生き方のヒント」が、瀬戸内寂聴さんの最新刊『愛に始まり、愛に終わる 瀬戸内寂聴108の言葉』(宝島社)には詰まっています。柔和な笑顔で人々を励まし、救ってきた瀬戸内さんの人生哲学は、きっとあなたの「心の栄養」に。御年99歳を迎えた瀬戸内さんの、胸に響くメッセージの一部をお届けします。

【前回】瀬戸内寂聴108の言葉「言葉で人を殺すこともあるんですよ」/愛に始まり、愛に終わる

【最初から読む】「男と女の間には永遠に渡りきれない川が流れていて」

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【業について】「多くの相談に乗られているが、ご自身の悩みはどう解消されている?」という読者からの質問に答えて。―2013年7月


私たちがしゃあしゃあと生きていられるのは、許してくれているものがあるから。そのことに感謝したら、人に対して「許せない」なんて厳しいことは言えなくなります。


90にもなって人に相談しなきゃならない悩みがあったら、恥ずかしいじゃない(笑)。

だけどやっぱり生きている限り、あれをどうしようこうしようという迷いはありますよ。

確かに私のところにはたくさん相談が寄せられますね。

長い手紙もよくきますよ。

返事は書きませんが、来た手紙は必ず読みます。

相談にしろ手紙にしろ、そこで気づくのは「(他人が)許せない」という気持ちに苦しんでいる人が多いということ。

でも人間を許すことができるのは仏様や神様だけですよ。

だから、そのへんは仏様や神様に任せておけばいい。

そもそも許す前に、自分が許されて生きていることを感じるべきです。

私たち自身が許されて、今を生きているわけですから。

嘘をついたり意地悪をしたり人を傷つけたり、動物を殺して食べたりしている私たちがしゃあしゃあと生きていられるのは、許してくれているものがあるから。

そのことに感謝したら、人に対して「許せない」なんて厳しいことは言えなくなります。

【まとめ読み】「愛に始まり、愛に終わる」記事リスト

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「愛」「無常」「老」「死」など8つのテーマに対して、瀬戸内さんが説く、生き方のヒント。「生きたあかし」とは何か、そして人生の道しるべが示されています

 

瀬戸内寂聴(せとうち・じゃくちょう)
1922年、徳島生まれ。東京女子大学卒。57年、『女子大生・曲愛玲』で新潮社同人雑誌賞受賞。61年、『田村俊子』で田村俊子賞受賞。63年、『夏の終り』で女流文学賞受賞。73年、平泉中尊寺で得度(旧名、晴美)。その後、『花に問え』で谷崎潤一郎賞、『白道』で芸術選奨文部大臣賞、『場所』で野間文芸賞など次々に受賞。98年、現代語訳『源氏物語』完結。2006年、文化勲章受章。近著に掌小説集『求愛』、長編小説『いのち』などがある。

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『愛に始まり、愛に終わる 瀬戸内寂聴108の言葉』

(瀬戸内寂聴/宝島社)

「人は愛するために生まれてきたのです――さすがに『死』を目の前にして、つくづく想うことは、この一事です」。御年99歳を迎えた瀬戸内寂聴さんが、法話や講演会、対談、新聞・雑誌での連載やインタビューで語った胸に響く言葉を厳選したメッセージ集。「愛」「生」「情熱」「無常」「老い」「業」「死」「祈り」をテーマに、こんな時代だからこそ心に留めておきたい108の名言がつづられています。

※この記事は『愛に始まり、愛に終わる 瀬戸内寂聴108の言葉』(瀬戸内寂聴/宝島社)からの抜粋です。

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