アメブロで「~こんな事を言っちゃあなんですが!~」を運営しているかづと申します。現在は夫婦二人と3ニャンとで暮らしています。私の嫁時代の体験を思い出しながら書いています。
前回の記事:「人生をかけて嫁イビリしてきた義母」が認知症になった結果...⁉ 医師からの「驚きの説明」/かづ
認知症になった姑の記憶の中から、伴侶である舅や息子である夫がだんだん無くなって行くのは目に見えて分かるようになってきた。
夫の顔を見ても全く表情を変えることなく、むしろこの人はなぜここにいるんだろう、そして誰なんだろうと不思議がるようだった。
舅の事はもうこの住まいの大家さんだと思っている時が多くなり、姑はしょっちゅう「ご挨拶しといた方がいい?」と聞いてくる。
孫である私の息子達の事は、とりあえず私の息子だと言う事は理解しているが、それが自分の孫になるんだと言う所までは繋がらない。
姑に認知症が発症してからというもの、ほとんど攻撃的な事が無くなって来ていたが、それでも突発的に「キレる」事があった。
ある日の事、姑が自分で冷蔵庫から牛乳を出そうとしていた。
握力も弱くなっているので、1リットルの牛乳は重くて片手で持ち上げるのは無理だ。
それでも元気な頃の様に片手で持とうとしているので、「お義母さん、牛乳飲みたいんですか?」と声をかけた。
なにも上からの命令口調で聞いた訳ではなく、何気ない毎日の会話の流れで聞いたのに、突然姑が両手を握りしめて小刻みに震えだし、その顔は怒りにあふれていた。
「バカにしてんのか!あんたが私の娘やったら1発2発殴ってるところやで!ただでは済まさんところや!」
姑は今にも私に掴みかかって来そうだった。
私は姑の正面に立ち、スッと笑顔を消してあくまでも冷静な口調でこう言った。
「お義母さん、殴りたかったら殴って貰ってもええですよ。その代わり、こっちもただでやられる訳にはいかへんからね。さぁ!殴りたかったらどうぞ殴ってみたらどうです?私、負けませんよ?」
その途端、姑は電池が切れたかのようにヘナヘナと台所の床に座り込んだ。
実際問題として、この時に姑が殴り掛かって来たとしても、当然すんなりと殴られることなどしないし、簡単に止められる自信があった。
それよりも、今後も起こりうる可能性の大きい私に対する攻撃のたびに、取っ組み合いをする訳には行かないのでこういう対処をしてしまった。
咄嗟のこととはいえ姑を脅す形になってしまった事は、何が正解だったのかは分からない。
けれどもその後、姑が怒りで暴れようとする事は無くなった。
姑は元々お喋りが好きだったので、日中起きている間はよく喋った。
ある日の夕食はクリームシチューだった。
姑は美味しい美味しいと、なんと7杯もおかわりをして食べた。
7杯とは言っても3杯目くらいからはスプーン1~2杯程度しか盛らなかったが...。
今までは「口に合うもんが無い」と言っていた私の料理を、認知症になってからと言うもの毎食絶賛して食べてくれる。
時には「小料理屋したらええのに」と言う事もあるほどだった。
本当は美味しいと思ってくれてたんやろなぁ...。
それでも嫁をいびりたくて、毎回まずいって言うてたんや...。
食べ終わって満足げに一息ついている姑を見ながら、台所の流しに何度も捨てられた料理を思い出した。
「お義母さん、お腹いっぱいになりましたか?果物は後でいいですか?」
食後には必ず果物のデザートが定番だったので、いつもの様に食卓を片付けながら姑に声をかけた。
すると姑はクスクスと笑いながらこう言った。
「お腹が張って張ってしょうがないわぁ。こんだけお腹が張るのはあんたが一服盛ってるからやわ。」
隣でまだ食事中だった舅が驚いて大声を上げた。
「なにを言い出すんや!」
それでも姑はクスクスと笑いながらこう続けた。
「さっきのシチュー、毒物が入ってたやろ?それじゃなかったらこんなにお腹が張る事なんか無いわ。吐き出そうとしたけどあんたに悪いと思ってなぁ。無理して食べたってん。」
自分が何杯もおかわりをした事なんか忘れてしまったのだ。
食後にこんなにお腹が張るのは、嫁が一服盛ったに違いないと姑は思ったようだった。
そう言えば昼間のワイドショーで、食材から毒物が検出された事件の報道をしていた。
前回私に怒鳴られた事もあってか、舅は私のご機嫌をうかがう事まではしないが、今更ながらだが姑が私に暴言を吐くと、私を庇うような発言をする事が多くなった。
しかしながら
「認知症になった今になって(私を庇うようなことを)言うのと、嫁いびり絶好調の頃に言うのとでは違うんやでお義父さん。」
と、舅に冷めた目で言った。
続く
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