生きるとはどういうことか、孤独とは、愛とは何か――。誰かを愛するがゆえに、心に生じてしまう苦悩。そんな迷いや苦しみを和らげてくれる「生き方のヒント」が、瀬戸内寂聴さんの最新刊『愛に始まり、愛に終わる 瀬戸内寂聴108の言葉』(宝島社)には詰まっています。柔和な笑顔で人々を励まし、救ってきた瀬戸内さんの人生哲学は、きっとあなたの「心の栄養」に。御年99歳を迎えた瀬戸内さんの、胸に響くメッセージの一部をお届けします。
【前回】瀬戸内寂聴108の言葉「苦しみを誰かに言うだけで、心に風穴が通るんですよ」/愛に始まり、愛に終わる
【最初から読む】「男と女の間には永遠に渡りきれない川が流れていて」
【業について】寂庵での法話で、「弱者」という言葉について語って。―1995年7月
言葉で人を殺すこともあるんですよ。
「弱者」と言いますけど、言う人には思い上がりがあると思います。
自分が強者だから、誰かを弱者と言う。
そうじゃないですよね。
そういうことを言っちゃいけないんです。
弱者と言われる側の人は、けっして思いやりとはとらないんです。
「あの人は病人よ」とか、若い人はすぐ言うのね。
「あのジジイ」とか「ババア」とかね。
私は自分のことをババアと思ったことがないから、言われたら「何よ」と言いますけどね(笑)。
そういうふうに言い返す元気があればいいですけど、もう、バアさん扱いされると嫌よね。
自分でも弱者と思いたくない。
だから、「ちょっとそこのおばあさん」なんてことは絶対に言っちゃいけないの。
おばあさんは90歳になっても、自分をおばあさんだとは思っていないの。
なんて言ったらいいと思う?
「元娘さん」て言う(笑)?
なんでもいいけど、無理に言わなくてもいいでしょう。
「ちょっと、ちょっと」と言うだけで振り向きますよね。
言葉で人を殺すこともあるんですよ。
だから気をつけましょうね。
【次回】瀬戸内寂聴108の言葉「許せないなんて言えなくなります」/愛に始まり、愛に終わる
「愛」「無常」「老」「死」など8つのテーマに対して、瀬戸内さんが説く、生き方のヒント。「生きたあかし」とは何か、そして人生の道しるべが示されています