生きるとはどういうことか、孤独とは、愛とは何か――。誰かを愛するがゆえに、心に生じてしまう苦悩。そんな迷いや苦しみを和らげてくれる「生き方のヒント」が、瀬戸内寂聴さんの最新刊『愛に始まり、愛に終わる 瀬戸内寂聴108の言葉』(宝島社)には詰まっています。柔和な笑顔で人々を励まし、救ってきた瀬戸内さんの人生哲学は、きっとあなたの「心の栄養」に。御年99歳を迎えた瀬戸内さんの、胸に響くメッセージの一部をお届けします。
【前回】瀬戸内寂聴108の言葉「しきたりや道徳は時代とともに変わるもの」/愛に始まり、愛に終わる
【最初から読む】「男と女の間には永遠に渡りきれない川が流れていて」
【老いについて】51歳で出家した自身を振り返るとともに、50歳という人生の節目にあたる年齢について語って。―1998年4月
今の五十歳なら、もう一度人生を仕切り直すことができますから。本当に自分に合った暮らし方と仕事を選び直すチャンスですよ。
現代人にとって五十歳は大きな節目、最大の転機でしょう。
会社員の男性なら定年というゴールが見え、専業主婦の女性なら子育てをほぼ終える。
老いた親を看取るのもこの時期だし、それが生物的な「更年期」とも重なる。
ナイスミドルなんていうけど、実は残酷な季節。
心とからだが動揺しやすくなるのは、当然ですよね。
京都の寂庵の門をたたくのも、申し合わせたように五十を挟んだ女性たち。
夫や子供、世間から自分は疎外されていると被害妄想に取り憑かれ、苦しい、力を与えて欲しいと訴えてくる。(中略)
でも、今の五十歳なら、もう一度人生を仕切り直すことができますから。
更年期は熟考のための小休止の時期だと考えればいい。
本当に自分に合った暮らし方と仕事を選び直すチャンスですよ。
その際、男も女も経済的な自立を果たすこと。
体力の続く限り社会とかかわって、少しは人さまのお役に立とうと思うこと。
これが基本じゃないですか。
【次回】瀬戸内寂聴108の言葉「家族と暮らして余計に寂しいということもある」/愛に始まり、愛に終わる
「愛」「無常」「老」「死」など8つのテーマに対して、瀬戸内さんが説く、生き方のヒント。「生きたあかし」とは何か、そして人生の道しるべが示されています