生きるとはどういうことか、孤独とは、愛とは何か――。誰かを愛するがゆえに、心に生じてしまう苦悩。そんな迷いや苦しみを和らげてくれる「生き方のヒント」が、瀬戸内寂聴さんの最新刊『愛に始まり、愛に終わる 瀬戸内寂聴108の言葉』(宝島社)には詰まっています。柔和な笑顔で人々を励まし、救ってきた瀬戸内さんの人生哲学は、きっとあなたの「心の栄養」に。御年99歳を迎えた瀬戸内さんの、胸に響くメッセージの一部をお届けします。
【前回】瀬戸内寂聴108の言葉「今の五十歳なら、もう一度人生を仕切り直すことができますから」/愛に始まり、愛に終わる
【最初から読む】「男と女の間には永遠に渡りきれない川が流れていて」
【老いについて】寂庵での法話で、孤独から逃れることのできない人間の宿命について語って。―1989年3月
一人で暮らしているよりも、家族と暮らして余計に寂しいということもある。
人間は家族と一緒に暮らしていても本当は孤独なの。
一人で生まれてきて一人で死ぬの。
そのことを覚悟していればいろいろなことにも耐えていかれるんですけども、一人で暮らしているよりも、家族と暮らして余計に寂しいということもある。
たとえば今は、私たちの世代とね、うんと若い世代とでは楽しむものが違うでしょ。
テレビひとつにしたって子どもたちの見るテレビは大人の私たちは、もうわからないのね。
それはもう世代の差とか断絶とかいうもんじゃない。
本当に違う世界の、違う星の人間同士なんですよ。
それが一つになって暮らすものだから、そこにいろいろと摩擦が起こる。
「どうせおばあちゃんはわからないから」とか言って、相手にしてくれない。
そしたら、とても寂しいでしょう。
そういうことがあるから、一人でいる寂しさよりも、家族と暮らして余計に寂しいという人が多いんですよね。
そして僻んで拗ねて、余計に嫌われる。
でもね、これは必ずそうなるの。
その前に自分が死んでいればいいけれどもね、そうはいかない。
ボケることもあるでしょうし、人間は必ず老いるということを覚悟してください。
【次回】瀬戸内寂聴108の言葉「苦しみを誰かに言うだけで、心に風穴が通るんですよ」/愛に始まり、愛に終わる
「愛」「無常」「老」「死」など8つのテーマに対して、瀬戸内さんが説く、生き方のヒント。「生きたあかし」とは何か、そして人生の道しるべが示されています