生きるとはどういうことか、孤独とは、愛とは何か――。誰かを愛するがゆえに、心に生じてしまう苦悩。そんな迷いや苦しみを和らげてくれる「生き方のヒント」が、瀬戸内寂聴さんの最新刊『愛に始まり、愛に終わる 瀬戸内寂聴108の言葉』(宝島社)には詰まっています。柔和な笑顔で人々を励まし、救ってきた瀬戸内さんの人生哲学は、きっとあなたの「心の栄養」に。御年99歳を迎えた瀬戸内さんの、胸に響くメッセージの一部をお届けします。
【前回】瀬戸内寂聴108の言葉「この世で誰かに出逢うことが『生きる』ということなんです」/愛に始まり、愛に終わる
【最初から読む】「男と女の間には永遠に渡りきれない川が流れていて」
【生について】寂庵の法話で、財物を損なわない布施のひとつ「心施」について解説するなかで語って。―1992年3月
あの人は苦しいんじゃないかなあなんて思えるときは、自分が幸せなときですよ。そう思って自分の現在に感謝する、自分の健康に感謝する。
死にたくっても死ねない。
死にたくなくっても死ぬ。
そういうことを、私たちは生きているうちに何度も味わわされて生きていくんです。
ですから、この世に、悲しくない人はいないんですね。
幸せそうにしていても、よく考えたら何か心配事がある人がいるのね。
何かあるの。
みんな心の中にあるんです。
だから、私たちは人の悲しみや苦しみに対して同情して、そして優しい言葉をかけて、余裕があれば慰めてあげる。
自分があんまり苦しいときは、人のことなんて考えられないですよ。
だから、あの人は苦しいんじゃないかなあなんて思えるときは、自分が幸せなときですよ。
そう思って自分の現在に感謝する、自分の健康に感謝する。
そういうことが大切だと思いますね。
【次回】瀬戸内寂聴108の言葉「しきたりや道徳は時代とともに変わるもの」/愛に始まり、愛に終わる
「愛」「無常」「老」「死」など8つのテーマに対して、瀬戸内さんが説く、生き方のヒント。「生きたあかし」とは何か、そして人生の道しるべが示されています