<この体験記を書いた人>
ペンネーム:電話恐怖症
性別:女
年齢:53
プロフィール:長い間IT業界にいるためか、変わった友人が多いシングルマザーです。
定年前は学校の先生をしていた友人は70歳、ちょっと変わっています。
家でテレビは全く見ません。読むのは新聞と偏った雑誌と文学書。庭は草ボーボー。「ちょっと草むしりすれば?」と言えば、「昆虫がいるから、草をむしったら可哀そう」。
食べ物は添加物が大嫌い。味噌醤油に至るまで全て手作りでないと気が済みません。そのこだわりようはまさに健康オタク。
友人には「友達」と呼べる人がほとんどおらず、遊び相手はご主人だけです。
そんな友人のご主人は70代後半、定年前はこちらも学校の先生をしていました。車の運転ができない友人に代わってご主人が車の運転手をして、二人とも大好きな古本屋や農家に産直野菜を買いに行く仲良しご夫婦です。
そんな友人夫婦ですがつい最近、ご主人が珍しいタイプのガンにかかっていることがわかりました。
結婚当初から今まで、様々な健康法を施してきた友人にとって、ご主人の病はまさに青天の霹靂。
ガンとわかったその日から、泣いて、祈祷をして、写経をして、墓参りをして、ひたすら2人で病気のことばかりを考えているようです。
「ピンピンコロリ!」と毎日ご夫婦で笑っていたのに...と切ない気持ちになります。
そんな友人から夜になると毎日電話がかかってきて様々な心配ごとや愚痴を聞かされます。
「主人の髪が抗がん剤で抜けたの。主人はオシャレに気を遣う人なのできっと嫌だって思ってるに違いないわ」、「主人の手術跡に薬を塗ってあげると『手を煩わせてごめんね』と言われるの。きっと病気になった自分を責めてるんだわ」、「ご近所の同じ年代のご夫婦が登山や畑仕事をしているのに、自分だけこんな病気になって恥ずかしいと思っているわ」など、友人の取り越し苦労なのか妄想なのかわからないことを一方的にしゃべっては泣いている友人。
最初は「可哀そうに」、「大変よね」と慰めていましたが、毎回同じような内容なので「たまにはリフレッシュも必要よ」と気分転換をすすめると「でも」、「だって」と全く聞く耳を持ちません。ただ聞いて欲しいだけのようです。
ご主人との二人の狭い世界に閉じこもっていた友人が、この先たった一人で広い世界に放り出されるかもしれない...その不安とストレスとで私に電話をしてくるんだと思いますが、答えの出ない電話を受ける私も本当にストレスで、最近電話の着信音がするとめまいや動悸が起こるようになりました。
年を取って生活や性格を変えるのはとても難しいことだと思います。でもそう言ってもいられない状況が世の中には起こりえるんだと思います。自分の環境が激変したときにこんなに他人に迷惑を掛けないよう、心の柔軟性を失わず、前向きに生きて行こうと改めて思いました。
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