「あの赤ちゃん、眠いのかしらね」に秘められた思い。「おせっかいな中高年にならない」はずでしたが...

<この体験記を書いた人>

ペンネーム:わんわん
性別:女
年齢:51
プロフィール:会社勤めの主婦。56歳会社員の夫、22歳大学生の息子と3人で首都圏在住。

「あの赤ちゃん、眠いのかしらね」に秘められた思い。「おせっかいな中高年にならない」はずでしたが... 23.jpg

会社員の夫(56歳)と大学生の息子(22歳)と暮らす私(会社員51歳)。

息子はまだ社会人ではありませんが、お互い干渉せず、個人対個人として生活しています。

私は29歳で出産してから、子どもが中学生になるまで専業主婦で、子育てとママ友とのお付き合いにどっぷり浸かった12年間を過ごしました。

夫は「来週から半年海外出張、帰ってくるのは来年」なんてことが日常茶飯事で、頼りにはできません。

また、両方の実家は在来線と新幹線を乗りついで4~7時間かかる遠方なので、親たちにも力を借りるのは難しい状況。

ママ友はいるけれど、相手も子育て奮闘中だし、私も性格的に人に頼るのが苦手でした。

これは愚痴ではなく反省です。

今から思えば、あんなに不安になったりピリピリしたりするくらいだったら、誰かに頼ったほうがよかったです。

礼儀をわきまえていない親子だと思われないように、息子にも自分にも厳しくしてしまい、毎日疲れ果てていました。

息子が赤ちゃんだった頃、二人で出かけるときなどは、万全の準備で出かけていました。

息子がお腹を空かせたり眠たくなったりして泣く時間を外し、電車が空いている時間帯を狙って乗車。

電車に乗るのは、外を見せていたほうが機嫌がよくなるからです。

抱っこ紐でずっと立って外を見せ、万が一のときは下車できるように快速ではなく各停に乗る...。

ここまで準備してきたのに、電車の中で息子が泣いてしまうこともありました。

大慌てで泣き止ませようとあたふた...。

そういうときに聞こえてくる子育て経験者らしき中高年のご婦人からの一言。

「眠いのかしらねえ」

「お腹がすいてるのかしらねえ」

今から思えば彼女たちに悪意はなく、「泣いているのは赤ちゃんの自然な行為だから大丈夫よ、私たち迷惑だなんて思ってないわよ」という温かい眼差しだったのでしょう。

ですが、当時の私は常にピリピリしていて、こんなことを考えていました。

「出かける前までずっと寝てたし、ミルクもちゃんと飲ませてきたの! 母親の私にだって何で泣いてるかわかんない。いい加減なこと言わないで!」

そう思いつつも、「すいません」と頭を下げ、自ら不要なストレスを生み出していました。

当時、ママ友とはこのような経験をあるある話として語り合い、中高年の理解のなさについて長々と愚痴を言い合った後、「自分たちは今のこの気持ちをいつまでも忘れずにいるわ!」と息巻いていました。

あれから20年近くが経ち、「この気持ちを絶対に忘れない!」と誓い合ったママ友とは休日に一緒にバスツアーに行ったり、都心でランチをしたりする、外見を含め立派な中高年になりました。

ある休日、ママ友と一緒に都心へランチしに向かう電車の中、赤ちゃんの泣き声が...。

どんな小さな声でも、赤ちゃんの泣き声が耳に入ると「行かなくちゃ」という気持ちになってしまうのはなぜでしょうか? 

介護の話で盛り上がっていた私たちはぴたりと会話をやめ、ついつい「行かなくちゃいけない対象」である赤ちゃんを目で探してしまいます。

そこでやっと、行かなくちゃいけないのではない、むしろ行ったら変だと思われると気づくのです。

そして、照れ隠しというか、大人になった息子ではなく赤ちゃんだった頃の息子を思い出し、勝手に口から出る一言が「眠いのかしらね」「お腹がすいているのかしらね」でした。

二人で顔を見合わせて、お互いの言葉に驚きました。

「私たち、ついにあの言葉を言っちゃったわね」

「中高年になれば子育て当時の葛藤を忘れるようにDNAに組み込まれている」そう発表した人もいるでそうですが、あれはうそだったのだという結論に至り、「いまだに育児時代の行動が染みついている」と自分たちを納得させることにしました。

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