<この体験記を書いた人>
ペンネーム:茉莉花
性別:女
年齢:52
プロフィール:アラフィフのシングルマザーです。3人の子どもがいます。
10年くらい前のお話です。
その当時、私たちアラフォー夫婦と子ども2人(幼稚園児と乳児)は、庭のある小さな戸建てに暮らしていました。
「犬を飼おう! 子どもたちの教育にもいいと聞いたから」
ある日夫が突然言い出しました。
「子どもと犬のお世話!? そんな大変なの嫌だ!」
私は全く気乗りしませんでした。
夫は何にしても、手に入れるまでは一生懸命、でも手に入ってしまったら急に興味を失うタイプだったので、いずれ世話をするのは私だろうと想像できたからです。
結局、夫は一人でペットショップに行き、チワワのBちゃんを連れて帰ってきました。
何だかんだ言いつつ、私もBちゃんの無垢でかわいい仕草にメロメロ、お世話の苦労なんてどこ吹く風になりました。
さて、Bちゃんが我が家に来てから半年後、3人目の子を授かりました。
男の子でした。
妊娠中に指摘はなかったのですが、生後すぐ重い心臓病があることが分かり、大きな病院へ搬送されてひと月ほど入院生活となりました。
犬と上の子たちの世話は夫に託し、私は3人目の子に付き添い入院。
少しの風邪が心臓病のある子には命取りになることもあると主治医に言われ、気が抜けない生活が続きました。
丁度この頃から、Bちゃんが体調を崩すことが増えました。
摂食拒否、そして下痢と嘔吐を繰り返し、身体はみるみる痩せ、毛もほぼ抜け落ちてしまいました。
同じ日に3人目の子とBちゃんの両方を通院させたことも何度かありました。
1人と1匹はそれぞれの病院でさまざまな検査を受け続ける仲間だね、なんてそのときは思っていました。
Bちゃんは検査で特に悪い所は指摘されず、とにかく体重を増やして体力を回復させてとの獣医からのアドバイスで、ドッグフードを何種類も用意しました。
食べてほしいと願うもなかなかヒットするフードがなく、点滴で栄養を摂る日もありました。
そんな状態でもBちゃんは、コロコロと寝転がる3人目の子の横に座り「僕がこの子を守るんだ」とでも言いたげな姿を見せ続けてくれました。
全く吠えることもなく、ただ静かに寄り添って見守るBちゃん。
Bちゃんを迎えて良かったと心が温かくなったのを覚えています。
3人目の子は生後半年で、心臓の手術を受けました。
術後1週間程は危険な状態にもなりましたがV字回復し、主治医の予想以上に元気になって退院しました。
それから約1カ月後、息子の術後検診に出かける際のことです。
それまでもBちゃんだけお留守番で出かけたことは何度もあったのですが、その日の朝だけは、なぜか胸がざわざわしました。
病院について先生から「もうこの子の心臓は大丈夫。根治です。薬ももういりませんね」と花丸の太鼓判を押してもらい、嬉々として病院から帰宅したら...Bちゃんは自分のケージの中で冷たくなっていたのです。
病院から帰ったばかりで、また動物病院へ...。
検診帰りの3人目の子も一緒に直行、すぐに蘇生処置を行ってもらいましたが、すでに息は絶えていました。
死因は吐いたものが喉に詰まったことによる窒息。
Bちゃん、最期はご飯を食べようと頑張っていたんだ...。
いろいろな感情が沸き上がって、涙が抑えられませんでした。
息子がもう大丈夫と言ってもらったその日に亡くなるなんて...。
きっとBちゃんは息子に命のバトンを渡して、自分は先にあの世へ帰ったのでは...そう思いたくなるような出来事でした。
あれから10年、3人目の子は元気なやんちゃぼうずに育っています。
ときどきBちゃんの写真を見ては、何だか懐かしそうな眼をしているので、この子の記憶のどこかにBちゃんは存在しているんだろうなと思っています。
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