<この体験記を書いた人>
ペンネーム:栄一
性別:男
年齢:54
プロフィール:会社員です。出身は関東ですが大学が中部地方で、そのまま就職しました。上下水道施設の維持管理をしています。
私は54歳会社員です。
お正月、節分、ひな祭り、お盆、お彼岸など季節の行事があるたびに、一緒に暮らしていた亡き義母のことを思い出します。
私の出身地は関東ですが、中部地方の大学に進学し、卒業後もその地で就職しました。
30歳のとき、会社の人の紹介で5歳年下の妻と結婚しました。
義父は早世しており、義母(当時55歳)と妻が住む家に同居することになりました。
同居を機に、姓も変えました。
銀行や保険の名義変更が面倒でした。
義母も妻も看護師で、2人とも忙しい生活を送っていました。
妻は日勤のみでしたが、義母は夜勤もあり、私も仕事が忙しく、あまり顔を合わすこともありませんでした。
義母も私もたばこを吸うので、たばこを吸いながら雑談をするといったコミュニケーションの取り方をしていました。
「栄一さん、たばこは一日何本吸うの?」
「10本くらいですね」
「それくらいならいいけれど、体のことも考えないと」
「そうですね」
義母の何気ない気遣いがありがたかったです。
結婚した翌年に長女が生まれたときに、義母は徹夜で出産に立ち会ってくれました。
無事に女の子が生まれたときは、本当にうれしそうでした。
私たち夫婦は義母に助けられながら子育てをしました。
子どもが病気になったときの付き添いや、幼稚園の送り迎えなどもやってくれて助かりました。
子どもは私と妻が育てたというよりは、義母に育ててもらったようなものです。
そのせいか、素直ないい子に育ちました。
毎年、正月に関東の実家に妻と子どもの3人であいさつに行っていたのですが、実父・実母にも、「お義母さんのおかげでいい子に育って」と言われていました。
異変が起きたのは、義母が定年を迎えてしばらくのことでした。
体調がすぐれない日が続いていたため、病院に検査入院をした義母は、白血病と診断されたのです。
「これまで風邪もひかなかったのに、この歳になって、こんな病気にかかるなんて」
義母はそう嘆きました。
これから、ゆっくり定年後の生活が始められると思っていた矢先のことで、私もやりきれない気持ちになりました。
定年後は趣味の庭仕事や国内・海外旅行を楽しみたいと言っていたのですが、結局、何もできずに療養生活に入ることになりました。
しばらくは自宅で療養していましたが、立ち居も難しくなり、結局、入院することになりました。
伯母がつきそってくれて、私(当時、東京に単身赴任していました)と妻は見舞いに行く程度のことしかできませんでした。
伯母に感謝するとともに、申し訳なく思いました。
高齢なので対症療法(抗がん剤の投与、輸血など)しかできず、義母は日に日に痩せ細っていきました。
もともと痩せていたのですが、入院中に病気のせいで食欲も落ちて、日ごとに体重が減っていくようでした。
2007年の7月に入院して、9月7日に亡くなりました。
その日も、妻と長女の3人で午後、見舞いに行き、そのときは大丈夫だったのですが、夕方、伯母から自宅に電話があり、「今、亡くなった」と言われ、病院に駆けつけました。
さほど苦しまずにすんだようで、死に顔は穏やかでした。
身近な人の死に立ち会うのは初めてのことだったので、戸惑いました。
親孝行ができなかった...でも、やらなければならないことが山ほどあって、そちらに頭が行って感傷的になってはいられませんでした。
病室の片付け、家の片付け、葬儀社への連絡、お寺との交渉、近親者への連絡などを順番に片付けていきました。
通夜、告別式が終わって、ようやく寂しさが感じられるようになりました。
これまで、義母がやっていてくれていた近所づきあい、親類とのつきあいなども、これからは妻と2人でやらなければいけません。
亡くなって改めて義母の有難み、大きさが分かりました。
これからは私が家長となって、家を切り回していかないといけないと考えて、果たしてそれがうまくできるのかと、不安に感じられました。
入り婿とはいえ、まわりでは、私が跡を取ったと捉えています。
亡くなった義母に恥ずかしくないようにふるまうことを自分に課して、日々を過ごして今日に至ります。
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