<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ももたろさん
性別:女
年齢:52
プロフィール:夫婦の趣味は讃岐うどんと日帰り湯。
九州に住む実母・実父は今年で85歳と84歳。
結婚して関西に住む私は、ここのところ「遠距離介護」の方法を模索する日々が続いています。
2カ月ほど前、母が腰の圧迫骨折により救急車で病院に運ばれました。
このまま寝たきり生活に入るのではと心配したのですが、幸いにも歩けるまで回復し、今もリハビリをがんばってくれています。
コロナ感染予防のため面会が一切できず、父は病院窓口で母の洗濯物を受け取ったり、希望のものを差し入れたりで、そのかいがいしさはまさに「老々介護」。
九州男児とそれに仕える妻、という若き日の構図がすっかり反転してしまいました。
父は電話で「お母さんは最近、物忘れが増えとる」と言い、母は父のことを「お父さんがだいぶ物忘れが多くてねぇ」とメールしてきますが、間違いなく2人とも記憶力が衰えています。
病院にいる母は安心なものの、家で1人で過ごす父の方がかなり心配な状況です。
「急にさみしくなって、友だちの家に行ったらしこたま飲まされて、帰り道で倒れて救急車で運ばれたとよ」
笑いながらそんなことを話す父の電話に、すぐにでも帰ってあげたい気持ちになるものの、感染防止のためにも、県を超えてはなかなか帰れない状況です。
「やっとご飯が炊けるようになったよ」
「鍋をいくつか焦がしたよ」
など失敗談を笑いながら話すものの、父は全員九州から離れている私たち子どもにSOSはまだ出していません。
母の入院費用の支払いも「今のところは大丈夫」と、自分でなんとかしようとしているのだと感じました。
だから「父の日の前祝い」という名目でお金を送ると、激しく喜んでいたので相当うれしかったのだろうと思います。
母の介護と自分の老い先を案じているのかと思うと、娘として心が痛みます。
母の退院を検討するために、父が病院で説明を受けた日、母の容態を電話で聞きました。
「会議室みたいなとこで先生が4人ぐらいいて、何かにサインをしたよ」
あまりにアバウトすぎて、肝心な部分が分からない始末。
「お母さん良くなってるの? リハビリできてるの? コロナの予防接種は受けられるの?」
「えーっと、なんやったかなあ、ん? 病院の名前は何だったかな...。ん? 今、何を思い出そうとしてたかな?」
悲しいやら爆笑してしまうやら。
老いた父が、幼児のように頼りなく危なげに思える反面、母は病院から「カーディガンほしい、音楽聞きたい、昔の写真も見たい、佃煮もほしい」と、入院生活を楽しんでいるようにも思えます。
「お父さんが寂しそうだからときどき電話してあげて」
という母の絵文字付きのメールが明るいことが、父への哀れみを一層駆り立てて切なくなり、3日に一度の電話に加えて、缶詰やレトルト食品を箱詰めして送りました。
新型コロナウイルスに感染させてしまうリスクを心配して、ここ2年間帰省を控えているものの、ふいに突然逝ってしまうのではないかと不安が募ります。
父母のワクチン接種が済み次第帰省するとしても、その後の介護をどうすべきか。
自分の生活や仕事とのバランスをとるには介護施設を利用するのがいいのか、在宅介護を可能にするにはどのぐらいの頻度で帰ればいいのか、決めなければいけない時期が来たことを自覚しています。
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