<この体験記を書いた人>
ペンネーム:はるかの
性別:女
年齢:43
プロフィール:夫と中学生の子どもと暮らすパート主婦。
5年ほど前の出来事です。
私は家の近くのスポーツクラブに自転車で通っていました。
ある夕方のこと、そのスポーツクラブからの帰宅中にひったくりに遭ってしまったのです。
それは一瞬の出来事でした。
いつもは気を付けているのですが、その時はうっかり前かごにバッグを入れていて、後ろから来た原付バイクにあっという間に持っていかれてしまったのです。
もちろんすぐに警察に通報し、周辺の捜索をしていただいたのですが、犯人は見つかりませんでした。
結局その後も私のバッグが返ってくることはありませんでした。
「泥棒はお金の匂いが分かる」
などというのを聞いたことがありますが、まさにその通りで、その時の私のバッグには珍しく7万円くらいの現金が入っていました。
その他にもスポーツクラブで着替えた時に外したアクセサリー類が数点、海外ブランドの財布やパスケース、メイク道具一式、自宅の鍵、そして普段は入れない銀行の通帳も...。
銀行でお金を下ろしたのは数日前だったので、単にバッグから出すのを忘れていただけなのですが、まるで見計らったかのようなタイミングでした。
金銭的にももちろん痛手だったのですが、翌日さらに重大なことに気づいてしまいました。
それは、財布の中に、3日後に控えた大好きなアーティストのライブチケットが入っていたことでした。
世界中で人気のある日本のロックバンドで、今回も抽選でなんとかゲットできた夢のチケットでした。
とはいえ、きっと犯人にとってはただの紙切れ。
「お金はあげるから、チケットだけは返して!」と叫びたい気持ちでした。
藁にもすがる思いでチケット会社やファンクラブなどにも連絡をしましたが、どうにもならないという回答でした。
私はあまりのショックでしばらく放心状態で、そのあとも丸一日泣きはらし寝込みました。
しかも、そのアーティストは夫も大ファンで、今回のライブもとてもとても楽しみにしていたので、この事実を打ち明けるのには相当な勇気が要りました。
そして、ついに意を決して、ライブチケットがバッグとともにひったくられたことを泣きながら夫に告げました。
怒り出すような人でないことは分かっているものの、どんな反応をされるか、どれほどショックを受けるか、とドキドキしていた私の予想に反して、夫の反応は意外なものでした。
夫は話を聞いて、まず「タイミング悪かったなー」と大笑い。
「きっと、そのライブに僕らが行ってたら、交通事故にでも遭ってたのかもな。だから、神様が行くなって言ってくれてるんだよ」
ああ、そうだ、夫はこういう人だった。
夫は普段から行き当たりばったりの楽観主義。
どちらかというと心配性で段取り第一の私は、そんな夫の「まぁ、どうにかなる」という根拠のない自信に、いつもハラハラ・イライラさせられていまいた。
しかしこの時ばかりは、なぜか彼のこの驚くべきポジティブ思考に「あ、本当にそうかもしれない」と思えて、心が軽くなるのを感じました。
そして、たぶんこの言葉には、ポジティブ思考だけではなく、落ち込む私をなんとか慰めたい、元気づけたいという気遣いもあったと思います。
その気持ちも伝わってきて、とてもありがたかったです。
もちろん、ライブに行けない悲しみが全部吹き飛んだ訳ではありませんでしたが、1人だったら立ち直れないほど落ち込んでいたでしょう。
夫の心の広さと明るさに救われた出来事でした。
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