<この体験記を書いた人>
ペンネーム:まさかず
性別:男
年齢:42
プロフィール:コロナ下での出勤管理に頭を痛める、コールセンターの管理職。
私は、都内のコールセンターでマネージャーをしています。
主な仕事は、メンバーの人事管理・シフト管理です。
2020年はコロナの影響で、私の仕事も大変な年となりました。
5月からの緊急事態宣言では、在宅勤務の環境も不十分な中手探りでの対応。
出勤メンバーを十分に確保することができず、電話は鳴りっぱなしになってしまい、右往左往した数カ月間。
しかし、日にちが経つに連れて、オフィスの各所に消毒用アルコールが置かれたり、デスクにクリアのパーテーションが設置されたりと感染対策が充実しました。
そのおかげか、幸いにも感染者を出すことなく乗り切ることができています。
会社としても感染を防ぐための対策が作られ、その中に「発熱があれば出勤停止を指示する」というルールも設けられました。
コロナ禍に限り、発熱時の休暇は会社が命じたものなので、出勤扱いになる「特別休」としたのです。
感染の懸念のある社員を無理に出社させないためのルールで、心配がある場合は躊躇なく自宅療養を選択でき、社内で感染するリスクを抑えるということです。
しかし、一見素晴らしいこのルールが、今では私の頭痛のタネとなっています。
ある日、勤務表を管理している部下から、こんなことを言われました。
「○○さん。今日で特別休20日目ですね」
「前回取ってから2週間なので、そろそろ取ると思ってたんですよ」
ある特定のベテラン社員が、このルールを使って定期的に休むようになりました。
月に2回のペースで「熱がある」という理由で一日二日休みをとり、出社することを繰り返していました。
私が勤怠を報告すると部長からも「おいおい。○○は今日も休み? 通院はさせてるんだろうね?」とやや不審がっているようです。
翌日出勤した当人に聞いてみると、驚く答えが返ってきました。
「病院には行っていません。病院に行ってコロナをうつされる方が怖いです。どうしても行けと言われれば行きますが」
言っていることはもっともです。
人事部に確認すると「このルールは通院を強制するものではないので...」と言う見解なので、無理に病院に行かせるわけにもいきません。
結果として、本人の申し出に基づいて、特別休を与えることしかできませんでした。
しかし、それだけ休んでいたら、当然他の社員からは不満の声が上がります。
「○○さんの休み方ってありなんですか? 発熱なんて嘘ですよね?」
「この課の全員が○○さんと同じ休み方をしたら、仕事は回らないですよね?」
「○○さんのお休みには、本当に給料が出ているんですか?」
私なりに査定には差をつけて、頑張っている人には報いているつもりですが、他人の給料や賞与の額など知ろうはずもなく、これが本音だと思いました。
「そうだよな! 俺もそう思うよ」なんて本音では思っていても、言えるはずもありません。
「○○さんは身体が弱いみたいだから、通勤も結構大変なんだと思うよ」
苦し紛れにそんな言い訳をしても、社員の不満は止まりません。
「30代以上の大人は何かしら病気と付き合って仕事しているんですよ。通勤時間だって大して変わりません」
う~ん、確かに、都内のオフィスに出勤する人は、1~1時間半程度は電車に揺られて出勤するのが普通です。
結局、返す言葉は見つかりませんでした。
そんなある日、〇〇さん当人と面談をしました。
「最近、周りの方が冷たいのですが、なぜでしょうか?」
さすがに、周りの非難には気が付いていたようです。
「あなたが、特別休を使ってズル休みしてるからじゃないの?」などと真実が言えるはずもなく、「コロナのせいで、みんなピリピリしているのだと思いますよ」と答えるのが精一杯でした。
コロナ禍も1年を過ぎましたが、幸いにも自分の課からはコロナの罹患者を出すこともなく、売上などの影響も大変な業界から比べれば、限定的で幸せな境遇と感じています。
ただ、○○さんが有休を使って連休を並べたシフト表をみると、どうしても、モヤモヤがこみ上げてくるのを抑えることができません。
一日でも早くコロナが終息することを切に祈っております。
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