「ママと行けば良かったな、ごめん」授業参観に来た亡き父を傷つけた幼い私。今は心から尊敬しています

<この体験記を書いた人>

ペンネーム:くあら
性別:女
年齢:53
プロフィール:2020年、大変な年だったなあ。早く良い思い出に変わりますように。

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父は10年ほど前に70代後半で他界しました。

祖父の代から続く職人で、記憶の中の父はいつも作業着姿で、汗水たらして働いていました。

寡黙な人で、子育てに無関心という訳ではないのでしょうが猫可愛がりされた記憶はなく、ベタベタしてくることもない「昭和の父親」という感じの人でした。

小学校低学年の頃の、ある雨の参観日のことです。

教室の後ろにはいつもより綺麗な服を着てお洒落したお母さんたちが並び、同級生たちもソワソワして後ろを振り返っては手を振り合っていました。

私も母の姿を探しましたが、なかなか現れず、授業開始のチャイムと共に担任の教師が入って来ました。

それからしばらくして後ろの扉が開き、作業着姿の父が入って来て、真ん中あたりに立ち、振り返った私と目が合うと嬉しそうに軽く手を振ってきました。

その当時、平日の参観日に来るのはほぼお母さんで、お父さんの姿は滅多にありません。

どうしてもお母さんが来られない子は、おじいさんやおばあさんが来ていることはありました。

教室の空気がなんとなくざわざわし、隣の子に「もしかしてお父さん?」と不思議そうな顔で聞かれても返事をせず、それから一度も後ろを振り返らずに授業は終わりました。

教室から出て行くお母さんたちに紛れ、父が私のほうを気にしているのを横目で感じながらも、私は目を合わせようともしませんでした。

背広姿ならまだしも、作業着で来たことも恥ずかしかったのです。

「どうしてパパが来たの? ママに来て欲しかった! パパが来ている子なんていなかったよ!」

家に帰り、私は母に半泣きになりながら訴えました。

「ごめんなあ。いったん仕事に出たんだが、雨で仕事が無くなったんだ。家に戻ると今日は参観日だと聞いて、こんな時しか行けないし、急げば間に合うと思って走って行ったんだ。ママと一緒に行けば良かったかなあ」

涙を浮かべた私に、父は寂しそうに言いました。

そんな父の姿に、これ以上何か言うと泣き出してしまいそうで、黙ってその場を離れました。

しばらくはなんとなく気まずくて、父との会話もギクシャクしていました。

決して父のことが嫌いなわけではなく、ただ他の子と違うことが恥ずかしくて、そして父の作業着にも恥ずかしさを感じ、心ない言葉を言ってしまった幼い私。

中学生や高校生の頃も、友人が家に遊びに来た時に作業着姿の父がいると、友人に会わせたくない気持ちになったものです。

幼いながら、そのことを申し訳ないと感じてしまう自責の念もありました。

けれど、大人になり、父の仕事に対する真面目な姿勢や、その仕事の大切さを知り、幼い日に感じた恥ずかしさは尊敬に変わりました。

なぜあんな風に思っていたのだろうと、今度は自分が恥ずかしくなりました。

もし、父が生きていたなら、私の子供の参観日に一緒に行って欲しかった。

誇らしげな作業着姿で。

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コメント一覧

本当に実行していたら、あなたのお子さんも泣いて嫌がっていたのでは?大人の事情と子供の感情は別物ですよ。あなたがそうだったように。
私の父も10年前に旅立ちました。父らしく突然に誰にも迷惑をかけずに。 心筋梗塞。70歳でした。 いつも作業着でスーツ姿なんてほとんど見たことがなかった。車は作業車。日曜日もいつも仕事で不在。教育にもあまり興味がなかった。 でも私の心の中にはしっかりと残っているのです。 母がキレイに洗濯をした作業着を着て仕事に出る後ろ姿。 作業着も大きな手も真っ黒になって疲れているであろうにいつも背筋をピンとして帰ってくる姿。 作業車をキレイに掃除して、長距離ドライブに子どもが耐えられるように布団も積み込み母の田舎へ連れて行ってくれた事。 日曜日の代わりに天気が悪い日がお休み。だからいつも突然の計画。出来たばかりのディズニーランドやサーカスに連れて行ってくれた事。 教育には母が不満がる程に口出しはなかったけど、礼儀に関しては人の10倍厳しかった事。 そんな父に力強く温かく育ててもらっていたのに、何故か作業着がイヤだった私。 お父さん、ごめんね。 今はハッキリ言えます。 心からありがとう。 自慢のお父さんです。
子供ってそんなもんなんですよね。 あなたもお父さんも優しい人ですね。どうか気に病まないで。
きっとお父さん、天国から喜んで見守ってくれてると思いますよ。くあらさんのお子さんの授業参観を。 今でこそお父さんが参観日に来るのも割と珍しくなくなってきているんじゃないか(そうであって欲しい…)と思いますが、 愛していてもお子さんの参観日に行くのを面倒臭いと思ったり、目立つからと恥ずかしがるお父さんが多かっただろう時代に、お仕事着のまま必死で走って娘の教室に駆けつけて来てくれるなんて、本当に娘想いのあったかくて素敵なお父さんですね。 けれど当時子供心に不満を抱いてしまったくあらさんのお気持ちもすごく分かります。私も子供だったら同じ様に思ってしまったなぁ、と。 当時の想い出を振り返って、今はお父さんのことを尊敬しているというくあらさんとお父さんの優しさ、深い愛情がとっても伝わってくるエピソードでした。尊敬の気持ち、必ずお父さんにも伝わっていますよ。 誇らしげな作業着姿、かっこいいですね^ ^ 虐待の事件など親子の悲しいニュースが多い中、くあらさんの素敵なエピソードに心があったまりました。

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