<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ウジさん
性別:男
年齢:58
プロフィール:家にいる時間が増え、買い物に出ることも増えた58歳の男性です。「安物買いの銭失い」と妻(56)には言われます。
妻(56)はスーパーの新聞広告によくついてくる「何割引クーポン券」の類が大好きで、こまめに切り取っています。
「さ、買い物に行きましょ」
私を誘う彼女の手には、束になったクーポン券が握られています。
何カ所かのスーパーをはしごするのに付き合わされるのです。
「最初はこのスーパーね」
衣料品1割引きのクーポンで私の下着を買いました。
「まだ新しいのが家にあったような...」
「いいのよ、どうせいつかは使うんだから」
いつもこの理屈です。
割引で買う、ということが重要であって、今、必要かどうかは無頓着なのです。
次のスーパーでは冷凍食品でした。
4割引きということでした(我が家の冷凍庫は常にローリングストックでパンパンです)。
そんな彼女が先日、目を付けたのが「精肉20%引き」というクーポン券です。
「2割は大きいよね」と言いながら切り取っていました。
「ねえ、今日は買い物、頼んでもいいかなあ?」
また引っ張り出されるものと覚悟していたので、ちょっと意外でした。
「え? 買い物行かないの?」
「今日、友達と約束しちゃって、お茶しに行くのよ」
そう言えば、買い物にしてはめかし込んでいるなと思っていました。
「割引、今日だけなのよね。だからお願い」
「そう言われても、肉なんて何買えばいいんだか...」
「何でもいいわよ。なんたって2割引きよ、2割引き」
ご機嫌な妻を見て、断り切れませんでした。
スーパーに来てみると、やはり精肉売り場で考え込んでしまいました。
だいたい私はメニューに沿ってしか買い物ができないたちで、なんでもいい、が一番苦手です。
「豚肉? 鶏肉ならから揚げか? 寒い季節だから鍋用でもいいかなあ...」
あれこれ見ながら、ふと気づきました。
「割引なんだから、なるべく高い肉の方が儲けが大きいよな...」
そんなことを考えてしまい、足は牛肉のコーナーへ向かい、そこですき焼き肉が目に入りました。
「すき焼き肉もいろいろだなあ...これなんかもうまそうだなあ」
最初に手に取ったのは輸入牛のスライスでした。
ただ値札を見ると「4割引き」の文字が。
「ありゃ、割引済みか、じゃあクーポン券の対象外だなあ...」
それを棚に戻し、次に目についた「最高級和牛」の文字に手を伸ばしました。
「いやあ、こんな肉、食べたことないぞ...うわあ、こんなにするのか!」
今まで食べようと思ったこともない高級肉の値札を見て、ああ、これなら結構な値引き額になるぞ、とまさに魔が差しました。
「うわあ、すごいお肉ね! 贅沢!」
帰宅した妻は私が買ってきた肉を見てご満悦です。
「まあね。でもこんないい肉を買っても、家ですき焼きのたれで作るんじゃ台無しじゃないのかなあ...」
「何言ってんの! いい物はいいのよ。さあさっそく夕食にいただきましょ!」
その日の夕食は超高級肉のすき焼きに決定です。
「うーん、おいしい! やっぱりいい肉は違うわねえ」
満面の笑みで肉を頬張る妻は幸せそうです。
「こんないい肉が2割引きで食べられるんだから、クーポン様様ね」
私も食べてみて、おいしいのですが、値段に見合う味だと分かるほど舌が肥えているわけではありません。
「今日、輸入牛なら4割引きでさ...けっこうおいしそうな肉が、こいつの半額ぐらいで...」
「何けち臭いこと言ってるのよ、なんたって2割引なんだから、高い方がお得でしょ!」
でも割引きされたとはいえ、いつもより高い買い物だよなぁ...。
喜色満面の妻を横目に、何となく釈然とせず、損した気分でした。
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