<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ウジさん
性別:男
年齢:58
プロフィール:資産らしいものは田舎の一軒家ぐらいの58歳男性ですが、株での一儲けを夢見たこともありました。
不景気の時は公務員と言いますが、地方の町役場職員としてはコロナ禍でも特に生活の心配はしないで済んでいます。
しかし、聞こえて来るのは先行きの見えない不穏な話ばかり。
知り合いの飲食店も店を閉めました。
しかし、そんな最中だというのに株価はなかなか好調なようです。
バブル景気以来の高値を付けたニュースを見て、私が唯一持っている株について思い出しました。
30年ほど前、私はまだ新人公務員でした。
月々の稼ぎからわずかばかりの貯金をしていた頃でしたが、当時現役銀行員だった父(現在89歳)から電話があり、「少しは蓄えがあるんだったら一口乗らないか」と言われました。
当時話題になっていた大手通信会社が株式上場したので、その株を買わないかというのです。
父の話によると、仕事柄のつてもあり、兄(現在61歳)も含めて3人で買おうと考えているということでした。
100万円以上する株を買うのは、当時の私にとっては清水の舞台から飛び降りるような気持ちでしたが、「必ず儲かる」の父の言葉に乗せられて投資しました。
「どうだ、俺の言ったとおりだったろ?」
意気揚々とした父の電話を受けたのは2カ月ほどだったころのことです。
その頃、購入した株は300万円を超えるほどに跳ね上がっていました。
景気高揚の一大エンジンともてはやされ、人気は衰えを見せてはいませんでした。
とはいえ、買値の2倍以上になったのなら、私としてはそろそろ儲けを得たい思いでした。
「そろそろ売った方がいいんじゃないの?」
しかし、父の反応は違いました。
「何言ってるんだ! いいか、この株は500万円、少なくとも400万円超えまでは期待できるんだ。今売ったら損をするだけだぞ」
父と同じく銀行員になっていた兄も同意見だったので、もうしばらく様子を見ることにしました。
ところが、さらに2カ月が経った頃、この株は300万円を少し超えたぐらいの所で変動しなくなりました。
「値が落ち着いたってやつじゃないの? 下がらないうちに手放した方が...」
「追加販売されたせいだ。流動株が増えているんで値動きしにくいだけだ」
買値から考えれば2倍近い値ではあるのですが、一度400万円近い額を見ているのでなかなか踏ん切りがつきません。
父や兄が言うことなのでそこでも様子見を決めました。
しかし結局それ以上値が上がることはなく、値は漸減し続け、ブラックマンデーや消費税導入などの景気後退要因もあって、ついには買値を下回るほどになってしまいました。
「...こうなったら持ち続けて、配当に期待するしかないな」
父もすっかりトーンダウン。
我が家の株ブームはすっかり冷えてしまったのでした。
一攫千金のチャンスを失い、悔しくて売るに売れなくなりました。
今もまだ持ち続けていて、「もう10年ぐらいたったら、配当金の合計で元は取れると思うぞ」という兄の言葉に一縷の望みをつないでいます。
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