<この体験記を書いた人>
ペンネーム:みけ
性別:女
年齢:51
プロフィール:両親と同じ敷地に住んでいる51歳の自営業。
反抗期中の姪に、「おじいちゃんに反抗したことある?」と父親(私の兄)の文句を言いながら尋ねられて思い出した話です。
私は小・中学校でスポーツをしてきたので、高校に入学した時も早速部活に入りました。
しかし、同級生と合わず3カ月ほどで退部。
辞めた後、他の部活に入ろうかと思ったのですが、どのスポーツをしようか迷って決められません。
部活に入らなければならない訳ではないので、優柔不断な私はだらだらと迷っていました。
そうしているうちに変な仲間が近寄ってきて、私も不良のようなことをするように。
自分でもこれでいいとは思えないものの、ぼんやりと流されていました。
1年生が終わる頃には部活に入る気持ちなど失せて遊びまわり、父が決めた21時の門限をやぶらない日が珍しくなりました。
そんなある日、友達の家に遊びに行き、門限の21時を今までにないほど大きくオーバーしてしまったのです。
まずいなと思いつつ家に帰り、恐々と玄関の扉に手を掛けましたが、玄関の鍵が閉められています。
途方に暮れていると待機していたらしい母が気付いて入れてくれました。
母が言うには「帰ってきても鍵を開けてはいけない」「野宿でもさせろ」と父は怒っていたそうです。
鍵を閉められた事からも、父が相当怒っていたのは理解できました。
それどころか、一緒にいても声を聞かない日があるほど寡黙で、怒るも褒めるも母任せな父が鍵を閉めて母に「入れるな」とまで言ったのだから、相当の事だと思いました。
翌日、そのことで父に咎められたのですが、素直に謝れずに「うるさい」と言いながら卓袱台を蹴飛ばしてしまいました。
卓袱台の上には父の晩酌のコップがありましたが、蹴飛ばした衝撃でドバっとこぼれました。
「マズイ」咄嗟に謝らなければと思ったものの引っ込みがつかず、そのまま部屋から出て行こうとする私に、父は言いました。
「トップになるまで二度と敷居を踏むなよ」
静かだけど凄みのある父の声が背中に刺さりました。
初めて聞く言葉と声のトーンに、それはそれは背筋が寒くなったのを覚えています。
父は若い頃はなかなかヤンチャだったと本人以外の人達から聞いたことがあります。
そんな父がこのタイミングで放った言葉です。
「本気だ」
瞬時に悟りました。
父が言う「トップ」とは、番長など不良のトップということではなく、もっと上のことでしょう。
そのトップに立つ事に全力を傾ける人生とは、どれほど壮絶なものなのか。
想像してだけでゾッとして、私は行動を改め、部活に入ってスポーツで汗を流すことにしたのです。
どんなことでも引き際を見誤れば道を踏み外します。
私の流されやすい性格、甘さ、そして今の状況を見透かして、ひと言で目を覚まさせた父の、思慮深さを感じさせられた出来事でした。
とはいえ、そんなことまで姪に話しては叔母としてカッコがつきません。
だから、「反抗するのもいいけれど、引き際も肝心だよ」と偉ぶってアドバイスしておきました。
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