<この体験記を書いた人>
ペンネーム:おこめ
性別:女
年齢:45
プロフィール:夫・子供二人・パート主婦。
これは1年前の話。
44歳だった私は東京のど真ん中のデパートで、短期の販売員をしました。
年末に差し掛かる一番忙しい時期は、寒いし、忙しいし、お客様も急いでいる方が多くなります。
短期のアルバイトは私みたいにしょっちゅう働いている人もいれば大学生も多く、その時のスタッフは私以外が大学生男子1人女子2人という若いメンバーでした。
そんな中、当たり前のようにお歳暮の注文も来ます。
若い子にはあまり馴染みのないお歳暮。
リーダーを任されていたので、大学生に基本的なことを教えました。
お歳暮注文用のメモがあるのでそれを見せながら、お歳暮と言われたら、お歳暮ののしに「お名前はなんと入れますか? のしは外のしですか? 内のしですか?」そう聞くように、と伝えました。
男子大学生は私の言うことをきちんとメモし、口に出し繰り返していて、微笑ましかったです。
するとすぐにお歳暮を注文する和服の女性がいらっしゃいました。
「お歳暮ののしにお名前はなんとお入れしますか?」
男子大学生の100点満点の接客を、笑顔で後ろで聞いていた私。
「名前はいらないわ」
和服の女性の答えに、そのパターンを言うのを忘れたことに気づく私。
そうきたかーなんて、後ろで考えていました。
一瞬間がありましたが、男子大学生が「分かりました」と答えた瞬間、事件は起きました。
「何笑ってるのよ! 私、何がおかしなこと言った?」
和服の女性が怒り出したのです。
突然の出来事で唖然としましたが、すかさずフォローに入りました。
「のしにお名前なしでよろしいですね? かしこまりました」
話をそらそうとしても和服の女性の怒りが収まりません。
「責任者呼びなさいよ!」
「リーダーは私です」
そう答えたのに、再び男子大学生に食ってかかります。
「どんな教育してるのよ! なんで私を笑ったのか言いなさいよ!」
男子大学生に食って掛かる和服女性。
「のしのお名前がいらないパターンを私が教えなかったので、私の責任です。申し訳ありません」
そう答えても
「笑った理由を聞いてるのよ!」
男子大学生は黙って下を向いていました。答えないでいいからね、と心で願いながら。
何度謝っても収まらない和服女性。騒ぎに気付いたデパートの社員さんが割って入ってくださって、お客様を椅子のあるカウンターに連れて行ってくださり事なきを得ました。
和服の女性が去った後、男子大学生に謝りました。
「ごめんね、きちんと教えなくって」
「守ってくれてありがとうございました」
怖かっただろうに、きちんとお礼を言うなんて感心しました。
「愛想笑いしてただけでしょ?」
「そっす。なんか無意識に。接客だからと思って笑っちゃったんです」
お客様が彼の愛想笑いのどこに気に障ったかは分からないで終わりましたけど、彼はそれがきっかけで一皮むけたようです。
「初日が初日だったんで、もう怖いものないっす!」
その後の仕事は積極的に頑張ってくれました。
その話を聞いた女子大学生スタッフにも「なんかあったら俺と〇〇さん(私)が出るから大丈夫だよ!」と頼もしいことまで言っちゃって。
怖い思いさせてしまったけど、結果的に成長できたようで良かったです。
短期バイトの最終日は笑い話をしてお別れしました。
今もどこかで頑張っているんだろうと思います。
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