<この体験記を書いた人>
ペンネーム:やまと
性別:女
年齢:40
プロフィール:50歳の夫と二人暮らしの主婦です。
私は夫と2人暮らし。
実家も同じ都内ですが、少し離れたところに暮らしています。
父は80代で、母は70代。
コロナ禍では特に気を付けたい年代です。
しかし父は外出好きで、買い物や散歩など何かと理由を付けては外に行きたがります。
短い時間の散歩なら良いのですが、一度外に出るとあちこち寄り道して結局長くなるようで、母もものすごく心配していました。
緊急事態宣言が出たのは、まだ春で気候もよかった頃。
散歩をするには一番いい時期です。
父は外に出たがり母と言い合いになることもしょっちゅうで、私のところに母からよく電話がかかってきました。
私も父の事が心配になり電話で話してみましたが、元々父とは折り合いが悪かったこともあり上手に説得できません。
父は昔から頑固で高圧的なところがありました。
父が自分の考えを押し付けたり「そんなことも知らんのか!」と怒ったりするのが嫌で思春期以降は話すことも少なくなり、電話でちゃんと話すのも何年ぶりかという状態です。
「この先長くない人生なのに、好きなこともできずに何の楽しみもなく閉じこもってろと言うのか!」
「長くない人生をわざわざ短くしないで! 死にたいの!?」
ついつい喧嘩腰になってしまいます。
結局何も解決しないまま最初の話を終えました。
何とかしなきゃ...と思っていた次の日、郵便受けに私の大好きな神戸の中華料理店からお知らせが届いていました。
オンラインショップでセールをやっていて、売り上げの一部は医療への支援にもなるとのこと。
さっそく自分用に購入し、同じものを実家にも送りました。
話しても聞かないので、美味しいものを食べてせめて気を紛らわして欲しいとの思いでしたが、父は思いの外喜んでくれて電話がきました。
「あの肉まん、とっても美味しくて2つも食べちゃったよ。思えば神戸には小さい頃行ったな、覚えてるか?」
父は、私も覚えていないような昔の旅行のことを楽しそうに話します。
「あの時は姫路城にも行ったな。それから神戸の中華街の他にも長崎の中華街にも行ったこともあったよな、あの時も...」
外出と歴史が好きな父は、私が小さい頃は毎年のように家族旅行に連れて行ってくれて、各地の史跡めぐりを楽しんでいました。
父に昔の旅行のことを思い出してもらえるような物があれば、外出できなくても楽しんでもらえるかも知れない!
そう考えネットでいろいろ探し、日本のお城に関する本の定期購読を申し込みました。
そうしたらこれも喜んでくれて、頻繁に電話がかかってくるようになりました。
歴史好きな父は、お城や歴史に関するうんちくが止まりません。
最初のうちは聞き流していましたが、あまりにもたくさん話すので感心してしまいました。
若い頃は上から知識をひけらかしているように感じ、まともに話を聞いてきませんでしたが、私も大人になった今、改めて聞くと知識の広さにびっくりします。
なるほど私は何も知らなかったな...とちょっと反省もします。
家の中でも楽しみが見つかった父は、外出も頻繁にはしたがらなくなり、人がいない時間帯の散歩程度になったそうです。
最近では、昔の旅行の時の写真はないものかと押入れに眠っていた段ボールを引っ張り出してくるようになり、それに伴って家の片付けや断捨離も進んでいるようです。
思わぬ副産物として家がすっきりしてきたと、母も喜んでいます。
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