<この体験記を書いた人>
ペンネーム:とらとら
性別:女
年齢:51
プロフィール:51歳の兼業主婦。先日ようやく数年前に他界した実家の父の遺品を整理しました。
私は51歳になる兼業主婦です。
20代の頃結婚してからは、旦那(52歳)の実家に嫁入りして同居していました。
私の実家の方はずっと父と母が2人で暮らしていましたが、父は数年前病気でこの世を去りました。
1人残った母も最初のころはふさぎこんでいて私も心配していましたが、母の友人や近所の方が習い事などに誘って外に出るよう促してくれて、次第に元気になっていきました。
私も「よかった」と胸を撫でおろしたところで、ずっと出来ていなかった実家の父の遺品の整理を母と一緒にすることにしました。
実家はそこまで広くはありませんが、一応父には書斎がありました。
母が夫婦共同で使っていた寝室のクローゼットなどを整理するというので、私はその書斎を整理することになりました。
私の使い古した勉強机と、父の好きだった時代小説が並んでいる本棚しかない小さな部屋でしたが、いざ入ってみるといろいろな思い出が蘇ってきました。
まだ私が小学生くらいだった頃、漢字もままならない当時の私では到底読み切れない時代小説を、父に無理やり勧められて読まされそうになったこと。
高校の頃、進路についてこの部屋で初めて父と真剣に話あったこと。
私が大学生になった時に、学校の近くに下宿するため家を出る際に、私が今まで使っていた勉強机を捨てずに使うと言い出して仕方なく一緒に運び込んだこと。
厳格というか真面目な人で、私も子供の頃から甘やかしてもらったという記憶のない父の、良くも悪くもある思い出がいろいろ脳裏をよぎります。
「こんなこともあったな」と苦笑しながら整理をしていると、昔父が仕事で使っていたカバンから定期入れが出てきました。
開くとだいぶ前に期限の切れた定期券と一緒に、ぼろぼろになった私の小さい頃の写真が入っていました。
写真の中の私はおそらく5歳くらい。
初めて家族で静岡に旅行に行った時に、おねだりしてようやく買ってもらったソフトクリームをめいっぱい頬張っている写真でした。
セピアどころではないほど色あせて、ケースから出すとポロポロと崩れるように破れてしまうのではないかというほどぼろぼろになっていましたが、間違いなく私の写真でした。
父はそういう家族の写真を持って会社に行くようなタイプではない、と思っていた私が意外そうにそれを眺めていると、いつの間にか入ってきていた母が教えてくれました。
「お父さん。あんたの写真ずっとそれに入れて持ってたんよ。あんたが結婚する時もその写真見て、『大きぃなった』呟いてたわ」
また、父は私が一人暮らしを始めた時も結婚した時も「あいつ元気でやんりょんかいな」と何かにつけ言っていたそうです。
私は母が教えてくれた父の意外な一面を聞きながら、涙が止まりませんでした。
ボロボロの写真を見て、ずっと父に大切に思ってもらっていたのだと実感し、母に背中をさすられながらしばらく片付けどころではありませんでした。
実家の整理が終わった後、定期入れはそのまま仏壇にしまいました。
そして手を合わせ、ありがとうと何度も口にしたのでした。
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