<この体験記を書いた人>
ペンネーム:さくらみちこ
性別:女
年齢:53
プロフィール:いつも支えてくれる家族に感謝しています。
今から数年前、40代後半のときの出来事です。
「虫歯かな? あるいは別の問題?」
ある日、口の中にちょっとした違和感を覚えたのでいつもの歯科に向かいました。
早速全体のチェックです。
いつもならここで「虫歯ですね~」とか、「これは知覚過敏です」となり、治療開始となります。
でも、この時は違っていて、先生はとっても難しい顔になり、他の医療スタッフの方もぎこちないような、何とも言えない雰囲気に包まれました。
その原因がレントゲン写真。
そこには「病気のカゲ」と思われるモノがハッキリと映っていました。
「ここで治療は出来ません。紹介状を持ってすぐに別の病院に行ってください。出来るだけ早く」
そう告げられました。
このときの雰囲気と、先生の「出来るだけ早く」の言葉から、自分の体に重大な問題が起こっていることを悟ったのです。
そしてすぐに紹介された病院に向かい再検査。
結果はやはり同じで、「病気のカゲ」はここでもハッキリと映っていました。
そしてその状態から、とても深刻な状態であること、難しい病気の可能性が極めて高いと告げられたのです。
ショックのあまり、そのときの説明をあまりハッキリとは覚えていません。
ただ、唯一頭に残っていたのが「ガンならまだ打つ手があるのですが......」という先生の言葉で、そこからは、自分がどれほど深刻な状態に置かれているのかが伝わってきました。
もう、この段階で頭は真っ白。
夫に支えられながら、何とか説明を聞き終えることができたという感じです。
しかし、状況は待ったなし、すぐに精密な検査が必要となり、そのための日程が組まれました。
ほどなく当日を迎え、私の体にある「何か」の正体をハッキリさせるため、検査がスタートしました。
麻酔からメスで切開、いざ細胞を取るとなったタイミングで担当医の先生が「ん?」という言葉を発しつつ、丁寧に患部を確かめた後に一旦退室。
医療スタッフの皆さんがざわつき始めました。
ほどなく、検査中の私の周囲にたくさんの医師、医学生らしき人がどんどん集まってきて、その中には上層部らしき人たちの姿も。
その全員がレントゲン写真と私の患部を何度も何度も見比べては、不思議そうに首を傾げながらも安堵の表情を浮かべていたのです。
そんな状態の中、検査は終了。
「一体ぜんたい何が起っているの?」
そんな風に思っていた私ですが、担当医の先生から告げられた言葉に驚かされました。
「病気はどこにもありませんでした。もうなんにも心配いりません。もちろん治療も必要ありません。」
飛び上がるほどの嬉しい言葉でした。
どうやら、問題視された箇所にあったのは単なる空洞で、心配していた難しい病気どころか何もなかったのです。
「そんな不思議なことがあるの?」
ビックリしたのですが、病気じゃないことが分かっただけで文句なしです。
最近の病院での、詳しく丁寧な検査には感謝しかありません。
この瞬間「命の期限」と向き合い、そのための準備まで進めていた私に、いつもの日常が戻って来てくれたのですから。
そして、この経験が、「普通の暮らし」がどれほど素晴らしいのか、時間の大切さ、家族や友人への愛情と向き合わせてくれました。
今となっては、不思議で大切な思い出です。
これからもずっと、この時の思いを忘れないように生きていきたいと思います。
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