<この体験記を書いた人>
ペンネーム:文月奈津
性別:女
年齢:63
プロフィール:長男、次男、主人の4人家族。長男は近所で一人暮らし。主人共々体力が落ち、毎晩9時半には寝てしまう毎日です。
新型コロナウイルスの流行で、ステイホーム中のある日、31歳の長男からうれしい報告がありました。
「お母さん、結婚が決まったよ」
そう聞いて心の中で「万歳」と叫びました。
親ばかを承知で言ってしまうなら、まじめで努力家、心優しい長男は自慢の息子です。
「いつか、お父さんとお母さんを海外に連れて行ってあげるよ」
という約束を、一昨年にイタリアの7泊8日の旅に行くことで果たしてくれました。
自分のことで精いっぱいの主人と違い、長男は何かと私に気を配ってくれました。
階段を降りるのが苦手な私のためにさっと手を貸してくれたり、足元の悪いところでは「危ないから気をつけてね」と声をかけてくれたり。
国家試験の中でもトップクラスの難易度の試験に大学3年で合格し、誰にでも自慢できる職業に就いてくれました。
ただ、心配していたのはお嫁さんに望む条件が多いことです。
みんなが振り向くような美人がいい、頭の良い人がいい、温かい家庭を作ってくれる良妻賢母型の人がいいなどなど。
そんな女性はいるのか、と心配していました。
主人の転勤に伴い、長男は4つの小学校に通いました。
そのせいで友達ができづらいと嘆いていたこともありましたが、そのことが結婚相手との共通点になったようです。
「彼女もお父さんの転勤が多くて、4つの小学校に通ったそうなんだ。性格も僕に似ていると思う。外見はクールに見えるけれど、中身は全然違うよ。それにお母さんと一緒でアイドルグループのAが好きだって」
嬉しくなってしまった私は、長男に触発されてか、聞かれもしないのに主人とのなれそめや、なぜ主人を選んだのかを打ち明けました。
主人を紹介してくれたのは、兄の大学時代の知り合いのYさんでした。
当時兄が加入していた合唱団にYさんがいて、私をかわいがってくれたのです。
Yさんのご主人が主人の先輩だった縁で、お見合いをすることになりました。
でも、主人は私の好きなタイプではありませんでした。
不愉快な話をされたこともあり、私はYさんにお断りしたいと言いました。
「彼はいい人よ。もう一回だけチャンスをちょうだい」
Yさんにそう言われ、しぶしぶ付き合いは続きました。
今から33年前、主人が33歳、私は30歳でした。
最初に会った時は今までお見合いした人の話ばかりしていた主人ですが、今度は自分の事や家族のことを話してくれました。
主人の話を聞いているうちに、私はYさんが言っていたようにいい人かもと思い始めたのです。
主人の生まれた○○市では、市役所は人気の就職先だったとのこと。
顔が広い父親が市役所に就職できるように段取りをしたけれど、主人は大学に行きたいと上京。
4年制の夜間大学を、働きながら4年間で卒業したそうです。
私は合格した大学に行かせてもらえなかったので、1年浪人してお金をためて大学受験をした経験があります。
でも結局不合格。
そして主人のように地道に頑張れるタイプではなかったので、そこで大学をあきらめ働くことにしたのでした。
主人は私に欠けている強さを持っている人だと思ったのです。
さらに主人は4人兄弟の3番目。
それなのに、父親が病気で家業の靴屋さんをたたむことになった際に、両親を東京に呼んで面倒を見ていることも話してくれました。
複雑な家庭に育った私は、家庭で苦労している人なら信頼できると思ったのでした。
一緒にいても気を使わずのびのびできるところも、ワンマンな父が嫌だった私が魅かれた点です。
そう言ったら、長男が笑って言いました。
「よくわかるよ。いつものびのびしているものね」
「そうなのよ。おかげで、結婚した時より20㎏近くも太ってしまったけどね」
そんなことを言いながら、私は2人で楽しい家庭を築いてほしいと心から思いました。
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